Q&A・よくあるお悩み事

経営戦略・事業運営

パワーハラスメント防止法への対応について教えてください。

女性が多い職場なのでセクシャルハラスメントについては常日頃から気にしておりますが、知り合いの病院の院長からパワーハラスメントを防止するための法律ができたことを昨年末に聞きました。
医療法人で職員が10名未満の診療所を運営していますが、どのような準備をすればよいのか教えて頂きたいと思います。 (診療所院長55歳)

昨年5月に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立しました。職員数が100名未満の場合は、2022年4月から適用対象になります。

法律の施行は、大企業は今年の6月、中小企業は2022年4月からになっています。医療法人はサービス業に分類され、職員数100人超が大企業扱いになります。運営されている医療法人は10名未満とのことですので、2022年3月まで猶予はあります。ただ職員定着・確保をはかるためには早期に対応されることをお勧めします。

1.パワハラが起こる職場の背景・原因
パワハラはどのような職場でも起こり得るものです。独立行政法人労働政策研究・研究機構が平成24年4月に発表した「職場のいじめ・嫌がらせ、パワーハラスメント対策に関する労使ヒアリング調査」によれば、パワハラが起こる職場の背景・原因には以下の6つの要素があるようです。

☑ 過重労働とストレス
☑ 職場のコミュニケーション不足
☑ 成果主義
☑ 雇用形態の多様化
☑ 閉鎖的な職場
☑ ハラスメント意識の欠如

医療機関は、医師の働き方改革で特別視されているような過重労働と、人の生き死に直接関わるということでの他業種にはないストレスがあります。また組織が職種別・部門別に縦割りになり、個々人のプロフェッショナル意識が高いために、職場のコミュニケーション不足も生じがちです。
その他に症例件数を増やすことを目的とした成果主義や、職場における正規雇用、非正規雇用、派遣、業務委託などのさまざまな雇用形態の存在、ともすれば診療科ごと病棟ごと部署ごとに閉鎖的になってしまう職場、昭和世代の役職者のハラスメント意識の欠如など、医療機関にはパワハラが生じる原因が多く潜んでいるように思います。


2.「パワハラ」に該当する行為の判断基準は?
厚生労働省が2020年1月に「職場のパワーハラスメント防止のための指針」(ガイドライン)を公表しました。パワハラの定義をより詳細に明記したほか、企業の講ずべき措置やパワハラに「該当する例」「該当しない例」などを示しています。
まず職場のパワーハラスメントとは、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為と定義しています。具体的には、下表の3要素を“全て”満たす行為です。なお客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

「パワハラ」に該当する行為の判断基準

注意しないといけないのは、対象者となる職員はいわゆる正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などを含む雇用する労働者全員です。派遣労働者については、当該労働者派遣を受け入れる法人においても雇用する労働者と同様の措置が必要とされています。

 

3.「職場のパワーハラスメント」の典型例
厚生労働省は「職場のパワーハラスメント」を6つに分類し、典型例を示しています。

「職場のパワーハラスメント」の典型例

ただし上記の典型例について3つの要素をすべて満たさない場合は、職場のパワハラにはあたらないことになります。パワハラなのかパワハラでないのか、その境界線の判断はなかなか難しそうです。

就業規則の改定・労使協定の締結や社内研修の実施、相談窓口の設置など既に進められていると思いますが、厚生労働省の「あかるい職場応援団」(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/)に、各種資料や研修用動画、他社の取組事例などの情報があります。もしまだ準備が不充分と懸念されている場合は、ご確認いただき万全な状態で施行日をお迎えください。

一覧へ戻る