Q&A・よくあるお悩み事

増患・集患

患者数の減少…増患例や見直しのポイントを教えてください。

当院は、都心部の商業地区で内科のクリニックを10年間経営しています。地下鉄駅から徒歩3分でサラリーマン、学生なども多く利用しているようです。また、人口増加地区で立地条件には大変恵まれています。ところが、ここ2年間にわたって患者数は減少しています。当院の従事者に変化はなく減少の理由がよくわかりません。定例会議で診療時間の見直しをしてはどうかと提案がありました。診療時間の見直しで増患につながった例、見直しのポイントなどを教えていただければと思います。(診療所院長59歳)

「青年層から中年層」などの主たる患者層の利便性の向上を目的として 「診療時間の見直し」「検査予約制度の導入」「ICT技術の活用」等を検討

医療は、患者さんあってこそ成立するサービスです。ご質問には「患者数が減少している」とあり、このままでは経営が成り立たなくなるとの危機感が伝わってきます。ご質問を整理するとポジティブな点として、

①交通の便が至便なこと
②人口が増加している地域に在ること
③サラリーマンや学生のいわゆる青年層から中年層が多いこと

とあり、患者数の増加に向けて「診療時間の見直し」が課題となっていると理解します。なお、貴院の診療時間やスタッフの状況等の運営状況が明らかでありませんので、あくまでもご質問に対する一例としてお伝えします。

○ポイント1 目的ではなく手段である
ご質問からは、患者数を増やすことで収益の回復をお考えであると推察しますが、収益の回復はあくまでも「目的を達成したことによる成果」である点に留意しなければなりません。そこで大切になるのは、「診療時間の見直し」は目的ではなく、「目的を達成するための手段の一つ」という視点です。ついては、診療時間を見直すことで何を提供したいのか、見詰め直すことが今後に向けたスタート地点になると考えます。

○ポイント2 診療時間や提供できるサービスの検討
冒頭でふれた通り、ご質問では貴院の診療時間が明記されていませんので、一般的なケースである①開院日は月曜日から土曜日(午前)まで、日曜日および祝日・振替休日は休診、②診療時間は午前9時から12時、午後3時から6時(ただし、土曜日午後は休診)――を前提としてお伝えします。「サラリーマンや学生のいわゆる青年層から中年層が多い」とありますが、このような世代に対してアプローチしようとすれば、貴院の診療時間と患者層が仕事や学業に当たっている時間帯の多くが重複している点に留意することです。青年層から中年層が利用しやすい時間帯、始業前や終業後の利用しやすい時間帯の診療を検討することが必要です。胃十二指腸ファイバーや超音波断層撮影等を予約対応している医療機関は多いですが、これらの予約検査を患者の始業前や終業後に実施できると、患者は休暇を取る必要性がなくなります。ついては、診療時間を見直す際に各種制度を活用できるかどうかがポイントとなります。とはいえ、診療時間の見直しに当たり、単に時間を拡大するとスタッフの勤務時間をはじめとした労務問題の壁に当たります。そのため、職員配置や業務分担や役割分担、さらには就業規則等の見直し・検討したうえで効率化を図ることは、診療時間の見直しとともに実践することが要諦です。また、院長ご自身の負担を考慮すると、非常勤医師による専門外来の時間帯を設けることは、院長の負担軽減に向けた対応策の一つとなります。特に専門外来を設けることは、貴院の専門性にプラスアルファが加わることとなります。

○ポイント3 患者の利便性の追求
診療時間を見直すに当たっては、受診する患者の利便性を追求していくことも大切です。特に青年層から中年層にかけての受診機会を増やしていく仕掛けを設けることは、他の世代への対応と比べてもより重視していく要素であると考えます。青年層見詰め直す
から中年層の世代は、日常からICT技術に慣れ親しんでいる世代ともいえますので、患者の受診機会を増やしていく仕掛けの一つに「ICT技術の活用」があがります。具体的には、①診察予約システムの導入(インターネットやスマートホンアプリケーションの活用)検討→院内での待ち時間短縮化に貢献、②再来受付機や自動精算機の導入検討→院内での待ち時間短縮化に貢献、③キャッシュレス決済の導入検討→現金以外での支払方法の選択肢の提示、④検査データや画像診断結果の情報提供→いつでも自身の状態を確認できる、⑤オンライン診療への取組検討→直接の受診機会が少なくなる年齢層へのアピール――等があります。これらはICT技術やコンピュータシステムを活用したものですが、患者の利便性が追求できるとともにスタッフの負担軽減や労務管理・経営管理の精度確保に寄与します。

○ポイント4 スタッフの接遇面
どれだけ医療技術やICT技術が進化しても、医療の根本は「ヒト対ヒト」であることに変わりありません。また、院長をはじめスタッフの方々は医療人であるとともに社会人でもあるので、普遍的な社会マナーや接遇が実践されているかどうか、一度現状を見つめ直すことをお勧めします。なぜなら、厚生労働省をはじめとした各種団体は患者の受診機会等に関する調査を多く実施していますが、このなかで受診機会に大きく影響するのは「口コミ」です。特にスタッフの接遇・対応面は(良いも悪いも)口コミで拡大される点を考慮すると、今一度見つめ直すことが大切です。

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