医事・会計
オンライン資格確認導入に向けた具体的な対策
早ければ再来年3月からオンラインシステムを用いた保険証の資格確認がスタート システム面と業務運用面の2つの面からあらかじめ準備することが経営的に大切
まず、今後の導入スケジュールを確認します。
1)2021年7月から9月の間に保険医療機関・保険薬局で資格確認向けのシステム改修および運用テスト開始
2)2021年3月を目途にマイナンバーカードによる資格確認開始
3)2021年4月全保険者において、新規発行の保険証に2桁の付番開始
4)2021年5月を目途に保険証による資格確認開始
5)2021年9月診療分からレセプトに2桁付番した形式による請求開始
このように、早ければ再来年3月からオンラインシステムを用いた保険証の資格確認がスタートしますが、ご質問にある通り、あらかじめ準備しておくことが経営の側面からみても大切です。では、どのような課題に今から対応していけばよいのか、システム面と業務運用面に分けてお伝えします。
1.システム面…オンライン資格確認では各施設に設置されているシステムに応じて、
-1. マイナンバーカードの読み取り・資格確認等のソフトウエア・機器の導入、
-2. ネットワーク環境の整備(既存のオンライン請求の回線を活用)、
-3. レセコン等の既存システムの改修(デジタルの資格情報等の取込み)、
-4. ネットワーク接続のセキュリティ対策
——を講じる必要があります。ついては、現在使用している医事システムを利用してオンライン資格確認を行うためにどのような機器や環境等を最低限整備すればよいのか、具体的なシステム面の課題は、使用されているシステムのメーカーまたはベンダーに相談して下さい。なお、上記①から④の課題に対応するための初期導入経費は、医療情報化支援基金により補助金が交付されます。補助金交付に向けた申請手順は医療情報化支援基金から然るべき時期にアナウンスがあります。認証機器をはじめとした新しい什器が納入されるため、設置場所の環境整備・見直しが必要です。
2.業務運用面…受付業務の運用もこれまで以上に患者の個人情報保護や情報セキュリティ面を重視した運用に変更していくことが大切です。また、現在判明している下記の課題を踏まえて業務運用していくことが大切になります。
○課題1「公費負担や地域単独事業への対応」
生活保護法による医療扶助をはじめとした各種公費や地域単独事業による受給者証の確認は、「2020年度時点ではオンライン資格確認の対象とはしない」とするアナウンスが発せられています。そのため、公費併用患者の場合は当面の間はオンラインによる主保険の資格確認と目視による公費受給者証の確認との2段階での確認作業が必要となります。また、公費単独患者は目視による受給者証の確認となります。ついては、オンラインによる保険確認のみの流れと合わせると、(患者に応じた)3つの流れによって運用しなければなりません。
○課題2「窓口でのマイナンバーカードの確認方法」
マイナンバーカードで資格確認を行う際は、カードを預からず、窓口でカードに印刷されている患者の顔写真を確認したうえでオンライン資格確認を行うことを基本とします。そのため、マイナンバーカードは確認後速やかに患者に返却する流れが必要となります。現在の保険証確認作業においても、その場で確認・返却する流れを構築しておけば、再来春以降においてもスムーズな作業が期待できます。なお、再診時におけるマイナンバーカードの確認については「現行制度で資格確認済みとしている場面での運用について、関係者の意見を聞きながら検討する」とされています。
○課題3「マイナンバーカード、保険証のオンライン資格確認のルール」
保険証確認は、療養担当規則に基づいた運用であることに留意しなければなりません。なお、療養担当規則では受診の都度に確認することが求められていますが、全国的には少なくとも1月に1回の頻度で確認していることが標準的となっています。オンラインによる資格確認を見据えて、今後の保険証確認は「マイナンバーカードのオンライン資格確認は、現在の保険証の運用を考慮しつつ、マイナンバーカードを用いた資格確認のあり方について関係者の意見を聞きながら検討する」とされています。ついては、次期改定に伴う療養担当規則の改正の動向もありますが、国全体でのシステムの安定化を考慮すると当面の間は1月に1回の確認を継続していくことが妥当です。
オンライン資格確認に伴う様々な課題は、施設の規模や運用しているシステム構成等で異なるため、上記はあくまでも現時点で想定される対応策の一部であることにご容赦ください。ただし、全般的にはオンラインによる資格確認に伴い、日常業務の手順書や院内の個人情報管理規定を修正しなければなりません。ついては、今年度および新年度の行動予定にこれら手順書等の修正・改定版の作成着手を盛り込むことが必要不可欠です。