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経営戦略・事業運営

消費税増税に伴う診療報酬による補填の考え方や体系とは?

消費税増税に伴う医療機関の負担に対する診療報酬による補填の方法が議論されています。診療所についてみると、「配分される財源は全額を初・再診料に充てるのではなく、まず無床診療所(補填項目は初・再診料のみ)の補填を考慮して、初・再診料に配分を行うこととし」とされ、また基本診療料以外の個別の項目への補填に関しては、検査・処置・手術等の個別の診療行為について病院と診療所が算定する点数が異なることは適切ではない等の意見もあると聞いております。他にもさまざまな論点があり、現段階では未だ結論が確定していない部分もあると思われますが、全体的な診療報酬による補填の考え方や体系とはどのようなものになるでしょうか。診療所の経営に劇的に影響を与えるようなものはないでしょうか。ご教示下さい。(診療所所長51歳)

事前に中医協で示された消費税率改定後の点数から増収分を試算し、 納入会社や顧問税理士の協力・協議のもと支出増分を試算しておく

10月に予定されている消費税率改定は、保守的な観点に立つと、診療所の経営に大きく影響を及ぼすと考えられます。まず、2月6日に開催された中医協で公表された資料を確認する限り、消費税率改定に伴う診療報酬への補填は、基本診療料の各項目と特掲診療料の一部の項目の所定点数の変更での対応となります。また、薬価ならびに特定保険医療材料の価格もあわせて改定されます。中医協で示された改定後の点数を抜粋しますと、次の通りとなります。

◎基本診療料

○初診料
・初診料 (現行)282点 → (改定後)288点、うち消費税対応18点
・同一日2科目の初診料 (現行)141点 → (改定後)144点、うち消費税対応9点

○再診料
・再診料および同日再診料 (現行)72点 → (改定後)73点、うち消費税対応4点
・同一日2科目の再診料 (現行)36点 → (改定後)37点、うち消費税対応3点
・オンライン診療料 (現行)70点 → (改定後)71点、うち消費税対応4点

◎特掲診療料

○小児科外来診療料 保険薬局において調剤を受けるために処方箋を交付する場合
・初診時 (現行)572点 → (改定後)599点、うち消費税対応39点
・再診時 (現行)383点 → (改定後)406点、うち消費税対応26点

○地域包括診療料1 (現行)1,560点 → (改定後)1,660点、うち消費税対応103点

○在宅患者訪問診療料(Ⅰ)在宅患者訪問診療料1
・同一建物居住者以外の場合 (現行)833点 → (改定後)888点、うち消費税対応58点
・同一建物居住者の場合 (現行)203点 → (改定後)213点、うち消費税対応13点

前の消費税率改定(5%から8%へアップ)は2014年の4月であり、その際の診療報酬改定においても、上記に示した項目については本体点数とそのうちの消費税対応点数が明記されていました。そのため、上記の項目の現行点数には消費税率8%に相当する費用が含まれている点に留意ください。

では、具体的にどのように変化するのか、試算します。

1月当たりの初診料算定回数320回、再診料算定回数2300回、在宅患者訪問診療料(Ⅰ)在宅患者訪問診療料1同一建物居住者の場合の算定回数40回 と仮定した場合、次の通りとなります。
a 初診料 320回 ×(288点-282点)×10円 = 19,200円
b 再診料 2,300回 ×(73点-72点)×10円 = 23,000円
c 在宅患者訪問診療料 40回 ×(213点-203点)×10円 =4,000円
となり、合計で約46,000円が消費税改定対応による1月当たりの増加分となります。なお、貴院で健康診断等を実施されている場合や文書料をはじめとした療養の給付に関わらない収入についても、消費税率改定に伴い料金を変更しなければなりません。

とはいえ、上記で示した3項目は無床診療所で算定する一般的な項目ですから、はたして、これらの金額で諸経費の消費税率アップ部分を賄えるのかどうか、試算が必要となります。改定で別途対応する院内で使用する医薬品や特定保険医療材料にかかる費用を除くと、
・職員の交通費(通勤手当)
・水道光熱費
・通信費
・試薬や消耗品の購入費用
・医療機器の保守費用
・訪問診療で使用する車両の燃料代
・リネン類などの洗濯費用
などがあります。

そのため、消費税率改定に向けて
・診療報酬等では、消費税率改定対応項目にかかる増加金額はどれくらいなのか、
・諸経費のうち、消費税率改定によってどれだけ支出が増えるのか、
について、あらかじめ、①貴院に協力されている納入会社等(支払い費用に消費税が含まれている会社)に10月以降の見積提示をお願いし、②事務スタッフ(医事担当・経理担当)や担当されている公認会計士・税理士と協議するとともに影響を試算すること――が対応策の要諦であると考えます。

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