経営戦略・事業運営
有床診療所における地域包括ケアモデル運用支援のポイントは?
「地域包括ケアモデルとして」「病院からの受入機能として(在宅復帰率)」 「病院との共同指導」がポイントで、共同指導は専門職が病院に出向いて指導が要諦
今春に実施された診療報酬改定では地域における有床診療所の役割がクローズアップされていますので、今後その重要性は増してくると考えます。ご質問では、どのような施設基準を届け出て、またどのようなサービスを提供しているのかがわかりませんので、一般論としてお伝えします。
今春の診療報酬改定で有床診療所にかかるポイントは、次の3点にあると考えています。
(1)有床診療所として(地域包括ケアモデル)
今回の改定では、有床診療所入院基本料1・2・3の施設基準が次の通り変更されました。
(改定前)
「在宅療養中の患者への支援に関する実績(介護サービスの提供を含む)、専門医療等の実施に関する実績、急性期病院からの患者の受け入れに関する実績、医療機関の体制等に係る11の施設基準のうち2つ以上に該当すること」
(改定後)
「介護サービスを提供していること」「在宅療養中の患者への支援に関する実績、専門医療等の実施に関する実績、急性期病院からの患者の受け入れに関する実績、医療機関の体制等に係る10の施設基準のうち2つ以上に該当すること」とされました。ポイントは、介護サービスを提供していれば、これまでの他の要件(過去1年間の急変時の入院件数が6件以上等)は満たさずとも有床診療所入院基本料1・2・3の施設基準が届出できることになりました。
また、介護サービスの要件を確認すると、これまでは、「通所リハビリテーション・介護予防通所リハビリテーション」「居宅療養管理指導・介護予防居宅療養管理指導」「短期入所療養介護・介護予防短期入所療養介護の提供実績」「指定居宅介護支援事業者・指定介護予防サービス事業者であること」とされていましたが、今回の改定では上記4点の他に「複合型サービスの提供」と「介護医療院の併設」が加わりました。このような点を鑑みると、今後の空床対策として、短期入所療養介護(ショートステイ)はトピックス的事項であると考えます。
また、有床診療所入院基本料の加算として、介護連携加算(区分1:192点、区分2:38点、入院日から起算して 15日以降 30日までの期間に限り、それぞれ1日につき。65歳以上または40歳以上の要介護・要支援被保険者の患者が対象)の施設基準が新設されました。当該施設基準は、介護サービスを提供していることが必須要件であるとともに、区分1は有床診療所入院基本料1または2の届出が、区分2は有床診療所入院基本料3の施設基準届出が必要となります。
(2)病院からの受入機能として(在宅復帰率)
これまで、病院側の入院基本料等では「在宅復帰率」が求められる施設基準が多くあり、退院後の患者の行先として有床診療所のうち「在宅復帰機能強化加算」の施設基準を届け出ている診療所も対象でした。今回の改定では、病院の在宅復帰率の要件が見直されました。具体的には、①7対1看護体制の一般病棟の場合:退院後の患者の行先として有床診療所が設定されている点に変わりありませんが、これまでは「在宅復帰機能強化加算届出施設」に限定されていた点が緩和され、撤廃されました。②地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟の場合:「在宅復帰機能強化加算届出施設」に限定されていましたが、「介護サービス提供医療機関に限る」と変更されました。
また、在宅復帰機能強化加算を届け出ている診療所における平均在院日数は、これまでの60日以内から90日以内へと長期化されました。これらの点から、これからの有床診療所に求められているのは、「在宅復帰に向けたワンクッションとしての介護支援(情報提供と調整)機能」であると考えます。
(3)病院との共同指導
病院から引き受けた患者を自院の病床に収容せず、在宅診療でサービスを提供する場合、病院側との引き継ぎ・情報共有等が大切になります。
今回の改定では、退院時共同指導料(引き受ける診療所の場合は区分1で算定、在宅療養支援診療所の場合:1500点、以外の場合:900点)で算定対象となる職種が拡大されました。具体的には、従来の医師、看護師・准看護師の他に、薬剤師・管理栄養士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・社会福祉士が加わりました。ついては、在宅診療について病院からの依頼を受ける場合、退院前に病院へ出向いて共同で指導に当たることが大切になります。