経営戦略・事業運営
今後の地域連携を踏まえた、外来機能を強化するには。
平成30年度の診療報酬改定が答申されましたが、その中でかかりつけ医機能の強化が掲げられています。大病院の一般外来機能を、主に診療所に担ってもらおうということですが、初診患者の診療を担う機能を評価し、地域包括診療料や地域包括診療加算等を2つに細分化するなどで見直し、初診料の機能強化加算を新設するなど、さまざまな方向性が打ち出されています。算定の要件は、医師数が常勤換算2名と緩和されるところもありますが、やはり在宅療養支援診療所であることは、今後の連携を考えた場合必然となりつつあるように思えます。あるいは専門外来機能を前面に出して大病院と競い合うとなれば厳しさが増してくるように思えます。地域における多様な連携の中で外来機能を強化するにはどのような方向性が考えられるでしょうか。(病院長64歳)
「患者や家族にとっていつでも診てもらえる施設」「個別の症状や生活に即した提案ができ、重症化予防ができること」「多職種間で連携や情報の共有ができること」が大切
ご指摘の通り、今春の診療報酬・介護報酬同時改定では、診療所や200床未満の病院における外来機能は、地域包括診療料や生活習慣病管理料をはじめとした施設基準や包括点数の運用で、これまで以上に「かかりつけ医機能の明確化」が求められています。また、機能を明確化するに当たっても、今まで以上に「エビデンス」が求められています。
1.患者や家族がいつでも連絡・相談できること
地域包括診療料等の施設基準で求められているのは、「全人的な医療の提供」です。患者やその家族の傷病や生活環境を「よく理解している」ことがスタートラインになります。年齢を重ねるほど患者のもつ疾患は多くなり不安になりますが、その不安に対して「いつでも連絡を受けて相談にのる」ことが大切になります。昨今は小規模な病院でも標榜科目や医師の専門化が進み、「いつも診ている疾患以外はその担当医でなければわからない」とするところが増えているようですが、自院にかかっておられる患者や家族の話に耳を傾けていくことが肝要です。
2.患者や家族にとっていつでも「まずは診てもらえる」施設であること
原則として、病院は24時間365日運営しており、診療所と比べて重要となるのが救急対応です。自院を定期的に通院したり、訪問診療を受けている患者については、症状の増悪等で救急搬送を所轄の消防署に要請された場合には一度は自院で受け入れ、そのうえで高次機能や専門性による診療が必要と判断した場合は即座に他院へ協力要請することが、診療所や小規模病院には望まれます。今次の診療報酬改定の施設基準には「夜間休日救急搬送医学管理料」に「救急搬送看護体制加算(200点)」が新設されます。届出要件の概要は、「救急用の自動車又は救急医療用ヘリコプターによる搬送件数が、年間で200 件以上であること」、「専任の看護師が配置されていること」の2点です。要件からみれば、2次救急の指定医療機関であることに加え、1日1件の救急搬送患者の引き受けおよび救急担当の看護師を配属させていることですので、容易に届出が可能で、これにより「いつでも診てもらえる」との質が担保されると考えます。
3.患者にとって症状や生活に即した提案ができること。また、重症化を早期に予防できること
同じ病名であっても、患者によって症状は異なりますし、生活環境が異なるために日々の生活に則した提案も異なってきます。従来から生活習慣病の重症化予防にかかる項目として、「生活習慣病管理料」が医学管理等の一項目として設定されていますが、当該項目にかかる療養計画書では、「重点を置く領域と指導項目」として、食事・運動・たばこ・その他の4区分において具体的な指導項目が示されています。当該項目は、今春の診療報酬改定で、①糖尿病の患者については、検査欄の血糖値及びHbA1cの欄に、高血圧症の患者については、血圧の欄は必ず記載すること、②治療効果が十分でない等のため生活習慣に関する管理方針の変更、薬物療法の導入、投薬内容の変更等、管理方針を変更した場合に、その理由及び内容等を診療録に記載し、当該患者数を定期的に記録していること、③学会等の診療ガイドライン等や診療データベース等の診療支援情報を必要に応じて参考にすること――と、重症化予防に向けては、患者の意識づけやエビデンスの活用が大きな課題となります。
4.他院やさまざまなサービスと職種間相互で連携・情報共有できること
これまでも、医科・歯科・調剤相互の診療情報共有が大きなテーマでしたが、今回の改定では、さらに突っ込んだ形となっています。たとえば、高次機能の病院に入院していた患者が退院した後に貴院で在宅診療を提供される場合、これまでは医師・看護職員による共同指導を評価する項目に「退院時共同指導料1又は2」がありました。今回の改定では対象となる職種に、薬剤師・管理栄養士・理学療法士等又は社会福祉士が加わりました。なお、理学療法士等が共同指導に加わった場合には退院時リハビリテーション指導料が、薬剤師が共同指導に加わった場合には退院時薬剤情報管理指導料が退院時共同指導料各区分に包括されます。このような点から専門職種同士による共同指導は、これからの地域包括ケア体制のなかで外来診療や在宅診療へスムースに移行するために欠かせないポイントになると考えます。