経営戦略・事業運営
地域医療構想の終着点は?
レセプトデータをベースに病院機能について妥当性を確認して、必要に応じて機能の転換をさせ、閉鎖病棟は病床返還が基本
地域医療構想は、2016年7月から2017年12月中旬にかけて計10回検討・審議されています。ご質問に「地域医療構想の終着点はどのようなイメージなのか」とありますが、基本的には、①地域の実態(患者数、年齢層や疾患、提供されているサービス)に即した効率的な機能単位での病床配置、②ただしサービスや機能面からみて、公立・公的でなければ実施できないサービスについては配慮する――ことにあると考えます。
では、地域医療構想の実現に向けて、どのようなデータがベースになるのかといえば、病床機能報告制度に基づく報告内容とレセプトデータです。特にレセプトデータでは、(請求する)患者単位のレセプトに病床機能の情報(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)が付されているため、医療機関・病床機能単位でどのようなサービスが展開されているのかが明らかになります。平成29年12月13日に厚生労働省で検討された際には、「ある機能を選択した病棟に対し、『その機能らしい』医療の内容に関する項目を複数選択し、それらにすべて『該当しない』病棟の機能について、地域医療構想調整会議において確認する」とされています。つまり、急性期機能の病床で提供されているサービス内容が急性期に相応しいものであればよいのですが、データ等から慢性期機能と変わらないサービスを展開していることが明らかになれば、急性期機能から慢性期機能への転換を迫られることになるわけです。
では、地域医療構想調整会議の場で、どのような点が留意されるのか確認します。
【高度急性期・急性期機能】
○ 都道府県は、各病院・病棟が担うべき役割について協議できるよう、個別の医療機関ごとの各病棟における急性期医療に関する診療実績(幅広い手術の実施状況、がん・脳卒中・心筋梗塞等への治療状況、重症患者への対応状況、救急医療の実施状況、全身管理の状況など)を提示すること。
○ 高度急性期機能または急性期機能と報告した病棟のうち、たとえば急性期医療をまったく提供していない病棟が含まれていることから、明らかな疑義のある報告については地域医療構想調整会議において、その妥当性を確認すること。
【回復期機能】
○ 都道府県は、個別の医療機関ごとの各病棟における在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションに関する診療実績(急性期後の支援・在宅復帰への支援の状況、全身管理の状況、疾患に応じたリハビリテーション・早期からのリハビリテーションの実施状況、入院患者の居住する市町村との連携状況、ケアマネジャーとの連携状況など)を提示すること。
【慢性期機能】
○ 介護療養病床については、その担う役割を踏まえた上で、転換等の方針を早期に共有する必要がある。
○ 都道府県は、個別の医療機関ごとの各病棟における療養や看取りに関する診療実績(長期療養患者の受入状況、重度の障害児等の受入状況、全身管理の状況、疾患に応じたリハビリテーション・早期からのリハビリテーションの実施状況、入院患者の状況、入院患者の退院先など)を提示すること。
このように、各機能とサービスの実態をリンクさせることによって、地域単位の実態に応じた病床機能配置にしていくという意図がうかがえます。
次に、閉鎖病棟がある場合の取り扱いは、経営管理上の大きな課題です。厚生労働省は、病床が全て稼働していない病棟とは「過去1年間に一度も入院患者を収容しなかった病床のみで構成される病棟」と定義しています。すなわち、1年以上稼働しない(閉鎖している)病棟(フロア)があれば、①病棟を稼働していない理由、②当該病棟の今後の運用見通しに関する計画について説明するよう求めること――とされています。なお、病院・病棟を建て替える場合については、「事前に地域医療構想調整会議の協議を経て、病床が全て稼働していない病棟の具体的対応方針を決定していれば対応を求めなくてもよい」とされています。
上記より、建替・修繕等の計画がなく1年以上稼働していない病棟(フロア)があれば、合理的な理由を明らかにできない限り、許可病床数の削減・返還が求められることになります。