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経営戦略・事業運営

「かかりつけ医機能」評価、改定の方向性

2018年の診療報酬改定に取り上げられているという「かかりつけ医機能」の評価ですが、キーワードの一つが連携であり、24時間対応を複数の医療機関等で行えるような体制作りが考えられているようです。ここには診療情報の共有化のあり方やカルテの作成・保存の担当機関、診療報酬の帰属などさまざまな課題もあろうかと思われます。また、今後在宅療養支援診療所に踏み切るか否かの判断ポイントにもなるのではないかと考えておりますので、これらの点につきまして改定の方向性の展望をご教示頂きたくお願い致します。(診療所院長54歳)

「在宅医療」30万人時代を迎え確実に高まる「かかりつけ医機能」の評価、 地域医療連携の流れのなかで在宅療養支援診療所として機能の充実を図る

これからの地域包括ケアシステムの推進を見据えると、全人的なサービスを提供することで一人でも多くの患者から「かかりつけ医」として信頼されることが大切です。とはいえ、自院だけで一人の患者のすべてをマネージメントしようにも限界があります。ついては、専門性や機能を軸とした連携が必要となるのです。「かかりつけ医機能」は次期改定においても、さらに進化させる形で提示されることが充分に考えられます。
では、かかりつけ医や在宅療養支援診療所としてサービスを展開するに当たり、地域包括ケアを見据えてのポイントはどこにあるのでしょうか。

①他院からの協力を仰ぐ患者は、あくまでも自院が中心となってマネージメントする
一言に連携するといっても、他院からの協力を仰ぐ患者については自院が中心となって管理していくことは必須です。特に、患者の症状が悪化した際や夜間・休日における患者からの連絡への対応は、基本的に自院が受けることです。ただし、学会出張等で不在にする場合は、あらかじめ患者と連携先に一言伝えておく(出張で不在だからB診療所へ連絡すること等)・申し送る(出張で不在だから何かあれば対応してほしい等)ことが円滑な人間関係を進めていく上でも大切です。在宅患者が急変した際には「救急車で近くの病院へ行くよう」患者や家族に指示するだけでなく、その後、申し送り・情報共有を兼ねて病院へ出向き、患者や家族と顔を合わせることも大切です。

②連携先の確保はさまざまな機能を一つでも多く、そして人間関係を
患者一人はさまざまな疾患を有しています。それらの疾患に対してトータル的に様々な専門的サービスを展開しようとすれば、それぞれの専門家が一人でも多くいれば、サービス全体の質が向上します。ついては、
・自院の標榜診療科以外の診療科を有する医科診療所(精神科を含む)、
・後方支援してくれる病院、
・歯科、
・訪問看護ステーション、
・居宅介護支援事業所、
・調剤薬局(訪問薬剤管理指導による残薬管理)、
等が、自院のある地域にどれだけあるのか、どこにあるのかを明確にし、これらの施設1軒1軒との人間関係を構築していくことが第一歩となります。

③看取りへの対応
在宅医療と病床削減は同じテーマであり、言い換えれば「自宅の病床化」です。となれば、看取りへの対応は必然です。①でふれた通り、自院の患者だけでなく連携先の診療所からも(出張等で不在のために)看取りを依頼されることは充分に想定されます。看取りはあくまでも患者や家族の希望のうえで成り立ちますが、在宅療養支援診療所としてサービスを展開することを考えていらっしゃるならば、院長ご自身だけでなく院内スタッフ全員に看取りに関する認識の共有化を図ることが大切です。

④嚥下やリハビリテーションへの対応
患者が自宅で療養するためのベースとなるのは、生活の上で大切な人間としての機能を維持することにあります。すなわち、経口で食べられること、基本的動作能力・応用的動作能力・社会的適応能力を維持することがミッションとなります。ついては、提供するサービスの一環として(医療保険・介護保険どの保険を使うかは別として)嚥下訓練やリハビリテーションは重要な位置を占めます。
自院から直接提供できない場合は、他の診療所や訪問看護ステーションからの協力・助力を得られるようにして下さい。

⑤訪問看護サービスの利用
厚生労働省の調査によると、平成28年4月現在における訪問看護は、4年前と比べると要介護1及び2の状態にある患者の利用が増えているとの結果が示されています。特に、本人への療養指導・家族への介護指導・支援・リハビリテーションについて本人や家族からの要請、連携先からの情報提供があれば、訪問看護によって診療や生活の質を維持・向上させていくことを考慮しなければなりません。諸般の事情で自院から訪問看護を提供できない場合、地域(連携先)の訪問看護ステーションの助力を得ることが不可欠です。

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