人事・労務・採用
看護師・受付スタッフの意識改革についてご指導ください。
診療所は地域社会の一員であり、職員も社会人としての資質向上が必要に 専門技術やスキルの研鑽による「自信」は、接遇能力の向上にも大きく影響
数年前に厚生労働省が行った調査結果で、「自院を選択するに当たってのポイント」のトップになったのが「口コミ」でした。患者さんに対する職員の対応は、職員側の観点からみれば「ちょっとしたこと」であっても患者にすれば「大きなこと」であり、結果として自院の口コミに影響します。また、院長自身の診療スキルや対応に関する声なら院長自身が対応することができますが、職員の対応をどのように改善するのかとなると、もどかしいものがあります。そして、すぐに「接遇研修を受けよう」と考える医療機関が多いようですが、研修を受ける前に抑えておくべきポイントがあります。
(1)小規模であっても「組織」であり、地域の一員であること
「家族的な雰囲気で…」とのキャッチフレーズを表に出す医療機関もありますが、たとえ小規模な体制であっても組織であることに変わりはなく、「個」での対応ではなく、「面」での対応が求められます。したがって、日頃の職員ミーティングの時に、困った事例、患者さんからの申し出内容を職員間で情報共有し、次の来院の際に活かすことが大切です。また、患者さんのクレームには即座に対応することです。
さらに、お祭りや清掃活動など地域活動に参加することも重要です。院長先生が多忙であるならばスタッフを代理として派遣し、挨拶や活動に参加させることです。その際には、笑顔での対応が求められますので、和やかな雰囲気を職場に醸し出すための訓練になりますし、院内ではみられない患者さんの姿を知ることにもつながり、その後の院内でのコミュニケーションに役立ちます。
(2)院長自身やご家族の対応
患者さんに対する職員の対応は、院長先生やご家族の行動や対応の鏡です。職員の患者対応に問題があるのであれば、院長先生やご家族の対応を見詰め直すことも大切です。また、「親しい患者さん」とありますが、この点も気がかりです。患者さんとの対応で大切な要素の一つに公平性があります。「親しい・それほど親しくない」の垣根を取り払い、どの患者さんにも分け隔てなく接することも大切です。
患者さんや職員は、そのような点までみています。
(3)何のための接遇なのか
「接遇のレベルアップが課題」とありますが、それは自院の経営理念・目標を果たすための手段です。
診療所の場合、患者さんの日常に寄り添うのですから、「何かあればまた相談しよう、先生やスタッフの話を聴いてみよう」と思ってもらえるかが肝要で、そのためには話しかけやすい雰囲気づくりが必要です。それが次の来院に結びつくのです。
(4)スタッフの給与(生活の糧)は、誰から・どこから
医療機関の収入の原資の大半は、患者さんやその家族からの保険料や税金がベースです。院長先生をはじめ職員の生活は、患者さんやそのご家族によって支えられていることを職員に伝えていくことも大切です。それによって、生活を支えていただいている方々(医療機関でいえば患者さんやその家族)に対して耳を傾けることが当たり前という雰囲気を醸し出すことが大事です。ただし、相手の言い分を100%聞くということではありません。耳を傾けて尊重する姿勢が大事という点を強調すべきです。
(5)医療人である前に社会人として
患者さんからみた医療従事者のイメージは「専門知識とスキル」を担保したサービス提供者というふうに変わってきています。このため社会人として一般的に求められる資質の向上が、今後の接遇教育におけるキーになります。また、すぐに検証・実践できる能力が挨拶の仕方です。患者さんやご家族の方々、出入りの会社の方々に対して、和やかに挨拶できているのかをチェック・評価の基本にすることをお勧めします。
(6)その行動・対応が「口コミ」となる
職員の行動・対応のベースにあるのは「自信」です。専門技術やスキルの研鑽を積むことは、接遇能力の向上にも大きく影響します。その一方で、小さな不安でも行動・対応に大きく現れます。職員に対して、どのような局面であろうと「自信をもった行動・対応」を実践するよう指導することが大切です。職員の自信をもった行動や和やかな対応が結果として、貴院の評判向上につながるのです。