多角化(介護・福祉)
介護療養病床廃止の動きに向けた対応とは?
日頃からの医療機能連携や医師同士の付き合いなどで良好な関係を築くことが 地域における医療の最新情報を素早く適正に入手するためには不可欠
介護療養病床は平成29年度末に設置期限を迎え、それに代わり「介護医療院」がスタートします。介護医療院の機能は、①医療機能を内包した施設系サービス2種、②医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設(2種のうち1種は現行の特定入居者生活介護)――の2つに分類されます。厚生労働省では、昨秋に開催された「療養病床の在り方等に関する検討会」で、上記の機能に肉づけを図っています。上記①の「医療機能を内包した施設系サービス」について、たたき台として検討されている体制等は下記の通りです。なお、A・Bいずれも介護保険法が設立根拠法となります。
A.新たな施設(Ⅰ)
①主な利用者像:重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等 (現行の介護療養病床における療養機能強化型A・Bに相当)が対象です。
②施設基準:現行の介護療養病床の基準に相当します。
a.医師 48対1
b.看護・介護 ともに6対1
③病床面積:8.0㎡/床(介護老人保健施設に相当)。
なお、多床室の場合でも「家具やパーテーション等による間仕切りの設置など、プライバシー に配慮した療養環境の整備を検討する」とされています。
B.新たな施設(Ⅱ)
①主な利用者像:新たな施設(Ⅰ)と比べて、容体は比較的安定した者が対象です。
②施設基準:現行の介護療養病床の基準に相当します。
a.医師:100対1(1人以上)
b.看護・介護:あわせて3対1、ただし、そのうち看護は2/7程度
③病床面積:新たな施設(Ⅰ)と同じです。
次に、医療外付型サービスについて検討されている体制等は、
(1)設立根拠法:医療機関は医療法、居住スペースは介護保険法・老人福祉法
(2)主な利用者像:医療の必要性は多様だが、容体は比較的安定した者が対象
(3)施設基準:医療機関部分は算定する診療報酬によるが、居住スペースは「現行の特定施設入居者生活介護の基準を参考にする」
a.医師:基準なし
b.看護・介護:あわせて3対1、ただし、そのうち看護職員は利用者30人までは1人、30人を超える場合は、50人ごとに1人
①居住スペースの面積:個室で13.0㎡/室以上(現行の有料老人ホームの基準を参考)です。ただし、既存の建築物を転用する場合、個室であれば面積基準はありません。
これらの施設体系に転換するとした場合、平成29年度に法整備や施設基準等が決定された後、次期改定によってスタートする流れです。ただし、経過措置を設けての移行となります。移行に当たって大きな課題となるのが病床面積です。前述した新たな施設(Ⅰ)(Ⅱ)ともに、病床面積は、現行の介護老人保健施設での病床面積に相当する8.0㎡ですが、現行の介護療養病床の基準では従来型の場合、内法で6.4㎡以上とされています。すなわち、4人部屋に換算すると一室当たりで25.6㎡以上必要となります。そのため、新たな施設に転換するとなれば1室当たり3名に減少するため、1名分については他のサービスへの振替(他施設への紹介または在宅医療への切り替え等)が必要不可欠となります。
このように、病床面積が拡大されることは既存施設にとっては施設の改修が伴いますので、経過措置として「例えば、面積の拡大は大規模改修まで猶予する」点が強調されています。そして、経過措置がどれくらいの期間であるのかが、これからの経営管理において不安要素の一つになりますが、経過措置期間は長期に渡って設定されることはないと現実的に捉えるのが妥当と考えます。
このような点から、まず近隣の介護療養病床がどのタイプに移行しようとしているのか情報をキャッチすることが、今後の準備に向けたスタート地点となります。日頃の医療機能の連携や医師同士の付き合いなどで関係を良好にしておくことが、情報を素早く適正に入手するためには不可欠となります。近隣の介護療養病床が医療機能を内包したサービス・医療外付型サービス、いずれかに転換されるにしても、自院からアピールしていく点は共通するところです。また、近隣の介護療養病床とのお付き合いだけでなく、地域全般へのサービスの提供及びバリエーションの充実化を見据えて、特に看護師およびコ・メディカルスタッフによる訪問サービスの提供を検討・充実化を検討・実践していくことが中長期に見て不可欠であると考えられます。