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多角化(介護・福祉)

介護療養病床廃止の背景や具体的な内容について

介護療養病床が2017年度末に廃止されることによって、代替される新たな施設案が出されているようです。人員基準、施設基準などの内容がそのまま固まるかどうか注視しています。この背景にある考え方や今現在の具体的な内容についてご教示頂きたいと思います。(病院長57歳)

介護療養病床の新たな類型である「介護医療院(仮称)」の概要が固まる「介護医療院(仮称)」への移行までの経過期間は2018年度から6年間

介護療養病床は、2017年度(平成29年度)末に設置期限を迎えます。その背景には、

a.患者の社会復帰に当たって在宅の場の拡充を図ること、
b.転換の受け皿として人員削減をした転換型老健へ多くの介護療養病床は転換せず医療療養病床や一般病床に移行したこと、
c.医療療養病床と介護療養病床の違いが、患者や家族の視点から見てわかりにくいこと、
d.2025年(平成37年)に向けた医療・介護提供体制の一体的な整備が進められていること、
e.今後、「医療」「介護」「住まい」のニーズを併せ持つ高齢者に対して、これまでの類型にはない日常的な医学的管理、一定程度の介護に加え、「住まい」の機能を同時に満たす新たな類型が必要であること、

などがあります。
上記を踏まえ、厚生労働省の社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会では、

①医療療養病床(現行の20対1看護体制)、
②医療機能を内包した施設系サービス2種、
③医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設(2種のうち、1種は現行の特定入居者生活介護)、
の3種への転換を検討してきました。そして、検討結果から判明した上記②・③の施設類型案(介護医療院(仮称))は、次の通りです。

◎医療機能を内包した施設系サービス(Ⅰ)
①主な利用者像:重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者等 (療養機能強化型A・Bに相当)。
②施設基準:現行の介護療養病床の基準に相当する。
a.医師:48対1(3人以上)
b.看護・介護:ともに6対1
③病床面積:8.0㎡/床(介護老人保健施設に相当)。なお、多床室の場合でも、「家具やパーテーション等による間仕切りの設置など、プライバシーに配慮した療養環境の整備を検討する」とされています。

◎医療機能を内包した施設系サービス(Ⅱ)
①主な利用者像:前述の(Ⅰ)と比べて、容体は比較的安定した者。
②施設基準:現行の老健施設の基準に相当する。
a.医師:100対1(1人以上)
b.看護・介護:あわせて3対1、ただし、そのうち看護は7分の2程度
③病床面積:前述の(Ⅰ)と同じ。
次に、医療を外から提供する、居住スペースと医療機関の併設について検討されている体制等は、次の通りです。

◎医療を外から提供する、居住スペースと医療機関の併設
①主な利用者像:医療の必要性は多様だが、容体は比較的安定した者。
②施設基準:医療機関部分は算定する診療報酬によるが、居住スペースは現行の特定施設入居者生活介護の基準を参考にする。
a.医師:基準なし
b.看護・介護:あわせて3対1、ただし、そのうち看護職員は利用者30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人。
③居住スペースの面積:個室で13.0㎡/室以上(現行の有料老人ホームの基準を参考)。ただし、既存の建築物を転用する場合、個室であれば面積基準なし。
これらの施設体系に転換するとした場合、次年度(平成29年度)で法整備や施設基準等が決定された後、平成30年4月に予定されている診療報酬・介護報酬の同時改定によってスタートする流れです(ただし、経過措置を設けての移行です)。

なお、移行するに当たって病床面積が大きな課題になると考えます。何故なら、医療機能を内包した施設系サービスの病床面積は、(Ⅰ)(Ⅱ)ともに介護老人保健施設と同じですが、現行の介護療養病床の基準では(従来型の場合では)内包で6.4㎡以上(4人部屋に換算すると1室当たりで最低25.6㎡以上必要)となるため、1室当たり4人を確保しようとすれば、施設の改修が必要だからです。

一方で、検討においては「例えば、面積の拡大は大規模改修まで猶予するなど、所要の経過措置を設ける」とされていますが、それがどれくらいの期間であるのか、これからの経営管理において不安要素の一つになることと考えます。しかしながら、経過措置期間は長期にわたって設定されることはないと現実的に捉えるのが、経営管理上妥当と考えます。

なお、大規模改修を行わずに新たな施設に転換するとなれば、(前述の通り病床面積の基準が変更されますので)現行の4人部屋の場合、単純に試算すると一室当たり3名に減少しますので、1名×4人部屋の室数分の患者については他のサービスへの振替(他施設への紹介または在宅医療への切り替え等)が必要不可欠になると考えます。

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