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電子カルテについて今後の医療動向を見据えた導入のメリットとデメリットについて

当院は産科の診療所です。地域住民からの認知度は高く出産件数も月間30件以上はキープできており業況は順調です。将来は、他の病院で勤務している長男に跡を継がせたいと考えています。当院は電子カルテを導入していません。地域包括ケアシステムへの対応や患者情報の医療機関の間での共有化のため電子カルテは必要なツールとは認識していますが、今導入するかどうか迷っています。今後の医療動向を見据え価格面も含め導入するメリットとデメリットを教えていただけないでしょうか。(診療所院長64歳)

電子カルテの導入施設の増加、診療報酬面でもフォローの風が吹くなかで 導入のメリットを活かしつつ、診療現場で混乱の起きない形でシステムの移行を

厚生労働省の調査によると、①病院における電子カルテ導入率は、一部電子化を含めると約32%、今後電子カルテ導入を予定する施設は約22%、②病院におけるオーダリングシステム導入率は、約45%、③診療所における電子カルテ導入率は、一部電子化を含めると約35%、今後の導入を予定する施設は約4%――と報告されています。また、昨年の診療報酬改定では、診療情報提供料検査・画像情報提供加算(退院患者の場合200点、その他の患者の場合30点)が新設され、診療報酬上でも診療情報の電子管理や運用が促進されています。このようなことから、ご子息への継承を契機に電子カルテに移行することは、今後を見据えると必要不可欠と考えます。

【メリット】
1.紙カルテやフィルムの保管スペースが効率化できる

2.伝票をはじめとした紙の帳票類が削減できる
各種診療情報が電子化されても、移行後の数年間は医療法や療養担当規則に則り、紙媒体の記録を保管しなければなりません。とはいえ、長期的なスパンで考えますと、かさ張る紙カルテがなくなるため、紙カルテや記録類、レントゲンフィルム等の設置スペースや保管スペースが削減できることとなります。また、紙の記録類やフィルム処理に使用した定着液等の廃棄処理にかかる費用も削減できます。

3.すでに電子カルテを導入している他院・他施設との情報連携・情報共有が効率化できる

4.処方記録や検査結果等のデータ抽出や推移の把握が効率化できる

5.患者や家族への説明に説得力が増す
電子カルテを導入している医療機関が増加していることから、患者の紹介・逆紹介に当たっての情報のやり取りも、電子化が促進されています。特に他院や他施設から送付される検査結果や画像情報は、自院の電子カルテシステムで保存できるため、いつでも自院の情報と参照・比較できる効果があります。検査結果や画像情報を時系列で推移を把握するに当たって、電子カルテであれば瞬時にできるため診療だけでなく、患者や家族への説明時にも大きな効果を発揮します。また、従来は手書きであった書類作成も、患者の基本情報は医事システムと連動しますので、氏名や生年月日等を手書きする手間を省力化でき、また処方記録や検査結果等も電子データで貼付できますので、従来の作業からは大幅に効率化します。

6.人員を効率化できる
従来、情報伝達や管理に要した人員(人件費)の効率化につながります。受付の現場で、もっとも労力を要するカルテの収納にかかる人員が効率化されますので、電子カルテの導入は提供するサービスの質の向上や効率化に大きく寄与すると考えます。

【デメリット】
1.操作の習熟を含めた事前準備期間の確保

2.埋もれた情報が発見できない
情報が電子化されることは、今後さまざまな情報が「目に見えなくなる」ことにつながります。特に、プログラミングの仕方によっては、従来、目で発見できた情報が、「見えなくなる」恐れがあります。メーカーから納品された状態ですぐに使用するのではなく、メーカー担当者と綿密な打ち合わせ・セッティング・リハーサルを繰り返し、修正点を改善したうえで万全の状態での運用開始が不可欠です。

3.検査装置・画像診断装置との連動

4.持参・送付された書類の処理
情報の発信元が電子なので、その指示を受ける検査装置や画像診断装置も電子化されており、連動して作動することは必須です。また、自院が電子化されても、電子カルテを導入していない施設は多くあります。特に、画像記録や診療情報提供書等を紙やフィルムで受け取った場合の運用をどうするのか、別途検討・立案・実践することが不可欠です。

5.患者接遇
電子カルテを運用している施設で多い悩みの一つに「患者接遇」の悪化があります。具体的には、患者の顔を見なくなるなどして、患者は不安になり結果として信頼感が低下する恐れが生じます。導入後にもっとも注意しなければならない点です。

6.停電時の対応

7.プライバシー保護などに関する院内規定や運用の策定・実践
患者情報の漏えいやプライバシー保護を目的とした院内規定は、従来の個人情報保護対策から一歩進めたものの策定が不可欠になります。特に、「真正性の担保」が不可欠になりますので、使用するスタッフ個々にIDとパスワードを設定・付与しなければなりません。また、外部への回線に接続できる院内のコンピュータ(クライアント)を限定しなければならない等の管理が不可欠になります

以上、電子カルテ導入におけるメリット・デメリットを列挙しましたが、混乱するために、まずはオーダリングシステムの運用からスタートし、処方や検査等の指示の電子運用に習熟してから、電子カルテシステムに移行するのがベストであると考えます。

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