Q&A・よくあるお悩み事

増患・集患

地域医療連携に対する効果的なアプローチ方法とは?

当病院は97床の地方の市内中心部にある療養病院です。設立は昭和45年で地域住民からの認知度は高く、病床稼働率も2年前まで92%程度で推移していました。昨年地元の名士でもある創業者理事長が亡くなり、その後稼働率は80%程度に低下しています。集患については創業者理事長のネームバリューに頼ってきたため地域医療連携室さえない状況です。SWを雇用し地域医療連携室を設置しましたが、メンバーは素人集団です。近隣の医療機関などに対しての効果的なアプローチの方法をご教示下さい。(療養病院理事長46歳)

地域包括ケア体制の充実を見据え、退院支援体制・患者サポート体制を確立し、 地域連携パスにも参加して「顔の見える連携体制」を築き上げること。

ご質問からだけでは、現在の具体的な体制等を推し量りかねますので、あくまでも総論的な観点からお伝えします。まず、慢性期機能において必要不可欠な体制を確立・充実させてから、地域へのアプローチ・アピールを実践していく流れが大切です。なぜなら、一つでも多くのアピールポイントをもっておくことで、相手へのアプローチや説得力が増すからです。

①退院支援体制ならびに患者サポート体制の確立
まず、施設基準における「退院支援加算2」の体制構築と運用が不可欠になりますが、将来的には「退院支援加算1」での施設基準届出を見据えた経営目標を確立することをお勧めします。「退院支援加算1」は、今春の診療報酬改定で新設された項目の一つですが、その内容は今後の地域包括ケア体制の充実を見据えたものですので、経営目標の一つとして大きなテーマになると思われます。「退院支援加算1」の施設基準のうち、主な要件は次の通りです。

a 退院調整部門の設置…専従スタッフ1名(看護師または社会福祉士)の配置。
b 退院支援職員の病棟配置…専任職員を病棟に配置(2病棟に1名以上)。ただし、2病棟120人までであり、調整部門の専任者と兼務可能。
c 顔の見える連携構築…連携する医療機関や居宅サービス事業者(20カ所以上)の職員と定期的な面会を実施(3回/年以上)。
d 介護保険サービス連携…療養病棟の場合、過去1年間の介護支援連携指導料の算定回数が算定対象病床数の10%超。
患者サポート体制に関しては、患者や家族からの相談体制を評価した施設基準である「患者サポート体制充実加算」があります。患者や家族への支援体制を充実させる一環として、当該施設基準届出への取組も不可欠です。主な施設基準届出要件は、次の通りです。

a 患者またはその家族からの疾病に関する医学的な質問ならびに生活上および入院上の不安等、さまざまな相談に対応する窓口を設置している。
b aにおける窓口は専任の医師、看護師、薬剤師、社会福祉士またはその他医療有資格者等を当該保険医療機関の標榜時間内において常時1名以上配置する。
c 患者等からの相談に対して相談内容に応じた適切な職種が対応できる体制をとっている必要がある。なお、窓口は医療安全対策加算に規定する窓口と兼用であっても差し支えない。

②地域連携パスへの参加
病床稼働率の向上を見据えると、自院の外来から入院へつなげていくことには自ずと限界があります。ついては、脳卒中・大腿骨頸部骨折の地域連携パスへ参加することで、一般病床からの転院患者を引き受け在宅医療へつなげていくことは、病床稼働率向上への対応策の一つとなります。
なお、前述の「退院支援加算1」の施設基準を届け出て、地域連携パスに参加すると、「地域連携診療計画加算」の施設基準届出への要件を満たすこととなります。

〇総合評価体制の確立
入院患者の年齢層の主体は高齢者になります。「医療と介護の機能連携」の観点から、高齢者に対する総合評価体制の確立も、地域包括ケア推進を見据えると大切な要素です。当該体制にかかる「総合評価加算」の施設基準届出は必須になります。

〇情報の公開
効果的なアプローチの要諦は、相手に自院の状況を知ってもらうことです。そのためには、自院の体制や運営状況の情報を公開・提供することが不可欠です。公開する情報例を下記にあげます。
a.医療スタッフ数、特に看護師については分野別の認定看護師数
b.届出施設基準
c.患者数の推移
d.病床稼働率・回転率、平均在院日数
e.連携先(特に介護関係)
f.入院患者の疾病状況(ICD10準拠)

③顔の見える連携の確立
地域連携の根底にあるのは「人と人の関係」です。施設単位でもそうですが、各施設のスタッフ相互の信頼関係を築いていくことが効果的なアプローチの目標となります。顔の見える連携を確立することで、前述の情報公開や地域連携パスの運用がスムースになると考えます。

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