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経営戦略・事業運営

今後の療養病床の行方とやるべきことは?

当院は130床の療養病院です。内訳は、50床は介護療養病床、40床は25対1の医療療養病床、40床は入院料2の回復期リハビリ病棟です。病床稼働率は93%です。2018年3月末に介護療養病床と25対1の医療療養病床が廃止になりますが、当院はどのような選択をとればいいのか検討しています。今後の選択肢と今後分析すべきこと、やるべきことを教えて下さい。(理事長・病院長65歳)

将来、医療保険対応の療養病床は20対1体制へシフトすると考え 厚生労働省が公表した「サービスモデル例」を参考に体制を検討する

今春の診療報酬改定では、療養病棟入院基本料2(看護職員25対1体制)の施設基準届出要件が変更され、「医療区分2または3の患者が5割以上」となりました(本年9月30日までの経過措置期間があります)。また、①医療区分2、3の患者の割合、看護職員配置基準(25対1)のいずれかを満たさない病棟が、②看護職員配置30対1を満たす、本年3月末時点で6カ月以上療養病棟入院基本料(1または2)の届出を満たしている場合には、平成30年3月末日まで所定点数の95/100で算定することとなりました。すなわち、医療区分2または3の患者比率5割以上を満たさない限り、患者の状態に応じた所定点数は5%減額されることとなります。

具体的には、入院時生活療養費を算定する患者で想定すると、①入院基本料C(医療区分3・ADL区分1)を算定する患者は、1日当たり1389点から1320点となるので、患者1人1月当たりに換算すると2070点減額され、②入院基本料E(医療区分2・ADL区分2)を算定する患者は、1日当たり1305点から1240点となるので、患者1人1月当たりに換算すると1950点減額される――こととなります。

したがって、貴院の医療療養病床における1月当たりの収入は、患者の状態に基づく入院基本料の算定区分(A~I)までの比率が現状と同じと仮定すると、1月当たりで50万円から100万円の減収に直結するのではないかと推察します。また、1月当たりでこれだけの金額が減少するとなると、看護職員2名~3名分の人件費確保も難しくなるので、医療区分2、3に該当する患者割合を満たすことは、療養病棟運営上の大きな経営課題となります。将来的に医療保険対応の療養病床は20対1体制へシフトすることは充分に考えられます。

これを裏づけるように、本年1月中旬に厚生労働省から公表された資料(「サービスモデル例」)には今後の療養病床の行方が示唆されています。よって、次期改定は診療報酬・介護報酬の同時改定ですから、このイメージを基に具体的に肉付けされた内容が、次期改定のトピックスになると思慮します。サービスモデル例によると、以下の通り例示されています。

(1)医療療養病床:
①看護体制は20対1、②収容の対象は医療区分Ⅱ・Ⅲを中心とする者、医療の必要性が高い者、③人工呼吸器や中心静脈栄養などの医療や24時間の看取り・ターミナルケアを実施し、当直体制(夜間・休日の対応)も必要、④ただし、介護ニーズは問わない。

(2)医療機能を内包した施設サービス(2つのパターン):
(案1-1)①収容の対象は、医療区分Ⅰを中心として長期の医療・介護が必要な者、医療の必要性が比較的高く、容体が急変するリスクがある者、②喀痰吸引や経管栄養を中心とした日常的・継続的な医学管理を実施し、24時間の看取り・ターミナルケアを実施し、当直体制(夜間・休日の対応)またはオンコール体制も必要、③高い介護ニーズに対応できる、(案1-2)①収容の対象は、医療区分Ⅰを中心として長期の医療・介護が必要な者、医療の必要性は多様だが容体は比較的安定した者、②多様なニーズに対応する日常的な医学管理が行われ、オンコール体制による看取り・ターミナルケアを実施する、③多様な介護ニーズに対応できる。

(3)医療を外から提供する、居住スペースと医療機関の併設(医療機能の集約化等により20対1床や診療所に転換、残りスペースを居住スペースに転換):
(案2-1)①収容対象や実施体制は、前項の案1-2と同じ、②今後の人口減少を見据え、病床を削減。スタッフを居住スペースに配置換え等し、病院又は診療所(有床、無床)として経営を維持することを目的とする。(基準の緩和を検討)、(案2-2)現行の特定施設入居者生活介護(介護サービス付有料老人ホーム等)と同じ。

以上より、25対1下の看護体制による療養病棟は終わりを迎えることが考えられます。したがって、貴院の今後の経営や療養病棟90床の運営体制について、医療保険・介護保険を問わず、①医療区分2・3の患者比率が8割以上(これは20対1看護体制の療養病棟の基準の一つです)を満たすことができるのか、②8割以上を満たすには減床が必要なのか、③減床する場合、看護体制は20対1にアップできるのか、④減床する場合、医療区分の低い患者は在宅医療へ転換できるのか――を分析・検討することが不可欠です。そのうえで、サービスモデル例に当てはめて、今後の自院の療養病床の運営にベストマッチする体制を検討されることをお勧めします。

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