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多角化(介護・福祉)

訪問看護ステーション開設の成功要件とは?

訪問看護ステーション(以下ST)についての質問ですが、近年、株式会社等の企業による訪問STの患者数が増加していると聞きます。医療法人や財団法人などに加えて企業の進出が目覚ましい状況で、特に専門特化して特色を打ち出すこともなく、24時間体制を採ることも難しいとしたら今後の経営も極めて難しくなることは明らかです。また、地域にもよりますが介護保険ではなく医療保険の利用者が主体であれば、なおさら先細りの感を抱かざるを得ません。そこで、一般的なケースで、新規に医療機関がSTを地域で展開していくための成功要件などをご教示下さい。(医療法人理事長54歳)

「制度の利活用」「付加価値を高めること」「今回の診療報酬改定による動きを反映すること」の3点が訪問STの成功ポイント

現在、どのような体制で訪問看護サービスを提供されているのか、ご質問からは判断しかねますので、「自院の看護師が訪問している」と前提したうえでお答えします。ポイントは3点あります。

1.制度を利活用すること
医療法人は、訪問看護ステーションを開設できます。また、訪問看護ステーションを設立すると、介護保険において居宅サービス事業者および介護予防居宅サービス事業者の指定を受けなければなりません。介護保険による事業者指定を受けると、医療保険での「みなし指定」が同時になされます。そうすることで医療保険・介護保険おのおのでの訪問看護サービスが展開できますので、マーケット(利用者)の幅が広がります。

2.付加価値を高めること
訪問看護ステーションは、看護職員だけでなくリハビリテーション技師の配置も認められています。これによって、訪問看護だけでなく訪問リハビリテーションも展開できることとなりますので、ステーションの付加価値が高まります。なお、専門特化するのは、事業が軌道に乗ってからでも構わないと考えます。
また、24時間連絡応需体制をとることは必須です。これは、患者(利用者)の不安をいかに和らげるかに視座したものです。いつでも(ステーションスタッフの誰かに)連絡できることは、これからのサービス展開を見据えると、とても大切です。このことも、提供側の視点からみればとても難しいと考えてしまいますが、サービスの付加価値の向上に大きく寄与します。

3.今回の診療報酬改定による動きを反映すること
今回の診療報酬改定の視点で強調されているのは「患者(利用者)目線」です。そして、医療法人が訪問看護サービスを提供する大きなメリットは、施設間での情報共有や引き継ぎ等がスムースにできることです。
今回の改定では、「退院直後の在宅療養支援に関する評価」として、退院後訪問指導料ならびに訪問看護同行加算が新設されます。これらは「退院直後に、入院医療機関の看護師等が患家等を訪問し、当該患者又はその家族等退院後に患者の在宅療養支援に当たる者に対して、退院後の在宅における療養上の指導を行った場合の評価」を目的としたものです。また加算は、「在宅療養を担う訪問看護ステーション又は他の保険医療機関の看護師等と同行し、指導を行う」ことが要件になります。
対象は、

a.認知症高齢者の日常生活自立支援度判定基準でⅢ以上、
b.在宅悪性腫瘍患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態、
c.在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態、
d.人工肛門又は人工膀胱を設置している状態、
e.真皮を越える褥瘡の状態にある者又は在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している、

これら5つのいずれかに該当する患者です。
この項目のベースにあるのは「病院から訪問看護ステーションへの引き継ぎをスムースにさせること」にあります。病院で知った顔の看護師と引き継ぎ先の看護師が、退院直後の当面の間、共同で訪問してくれることは、患者や家族の目線から見ても心強く感じます。また、そのことが患者や家族からの支持につながるのです。

このように、在宅医療分野での改定項目の要件等を確認すると、今後に向けたさまざまなヒントがちりばめられています。

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