Q&A・よくあるお悩み事

経営戦略・事業運営

在宅医療の今後の先行きについて

当診療所は内科診療所と合わせて在宅医療を行っています。2014年の診療報酬改定では在宅医療の大きな改定があり、当院でも体制を整えることで大きな影響がありました。2016年の診療報酬改定でも在宅医療の評価の見直しが議論されていますが、今後の在宅医療の方向性はどうなるのか先行きが不安です。議論の方向性等についてご教示ください。(診療所院長55歳)

在宅医療の診療報酬改定は「患者の状態」「患者の居場所」の2つの面から運用方法の変更や所定点数の見直しを検討

次期診療報酬改定に向けた基本認識では、①高齢化の進展に伴い疾病構造が変化していくなかで、「治す医療」から「治し、支える医療」への転換が求められるとともに、健康寿命の延伸の観点から予防・健康づくりの取り組みが重要となってくる、②「医療介護総合確保推進法」等のもとで進められている医療機能の分化・強化、連携や医療・介護の一体的な基盤整備、平成30年度に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定など、2025年を見据えた中長期の政策の流れの一環としての位置づけを踏まえた改定を進めていく――ことが示されています。

また、将来を見据えた課題として、③地域医療構想を踏まえた第7次医療計画が開始される平成30年度に向け、実情に応じて必要な医療機能が地域全体としてバランスよく提供されるよう、今後、診療報酬と地域医療介護総合確保基金の役割を踏まえながら、診療報酬においても必要な対応を検討すべきである、④平成30年度の同時改定を見据え、地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療・介護の基盤整備の状況を踏まえつつ、質の高い在宅医療の普及や情報通信技術(ICT)の活用による医療連携や医薬連携等について、引き続き検討を行う必要がある――が示されています。

前回の診療報酬改定では、在宅時医学総合管理料や在宅患者訪問診療料の所定点数や運用方法が大幅に変更されました。また、次期診療報酬改定では、さらに運用方法の変更が検討されています。議論の方向性は、(1)患者の状態、(2)患者の居場所――の2つの面で示されています。

まず、患者の状態の評価に関しては、①患者の疾患・状態等にかかわらずおおむね一律なものとなっているが、実際には、健康相談等のみが行われている患者から人工呼吸器等の医療行為を必要とする患者まで、幅広い患者像がみられること、②長期にわたって医学管理の必要性が高い疾病(悪性腫瘍やパーキンソン病関連疾患等の神経難病)や処置等に該当する患者は、1カ月の訪問回数が多い等の割合が高く、診療時間も長い傾向がみられた、③一方で、1カ月の訪問回数は1回が妥当と医学的見解が示されている患者に対しても、在宅時医学総合管理料の算定要件を満たすため、1カ月に2回以上訪問している事例があること、④1回の訪問での診療時間は、1カ月に2回訪問した患者の方が、1カ月に1回訪問した患者よりも短い傾向がみられた――を中心にして議論されていることから、「より必要性に応じた評価にシフトしていく」ことが充分に予想されます。

患者の居場所にかかる評価については、①同一建物における管理料の減額は、月1回以上、訪問診療料の「同一建物以外の場合」を算定した場合は行われないため、重症でない患者も含めて頻回に個別訪問を行っている事例がみられ、診療の効率性が低下していること、②戸建て住宅やアパート・団地等において同一建物で訪問診療を実施している患者数は、「2人以下」という患者が全体の95%以上を数えたこと、③高齢者向け集合住宅と居宅等では在宅医療に係る状況が大きく異なる一方で、特定施設等以外の集合住宅と比べて特定施設等において訪問診療に要するコストが低いとはいえないことから、居宅等と高齢者向け集合住宅とで評価を分けることとしてはどうか――が指摘されています。

在宅医療にかかる点数の中心は、前述した通り在宅時医学総合管理料や在宅患者訪問診療料になりますが、これらはあくまでも運用評価の一つです。

地域包括ケアシステムは、「自宅の病床化」の延長です。そのためには、患者さんが住み慣れた地域で過ごしていくために、「治し、支える」をキーワードにすると、自院からどのようなサービスが展開できるか、患者さんに必要とされているサービスは何なのかを視座にしていくことが要諦です。

医療面では、①自院患者の疾患にスムースに対応するために近隣の専門医(自院とは別の専門性の発揮)との連携、②自院の看護師による訪問管理、または近隣の訪問看護ステーションからの訪問指導管理、③訪問看護ステーションのリハビリテーションスタッフによる訪問指導管理、④服薬管理…保険調剤薬局からの訪問指導管理、⑤歯科・口腔疾患への対応…近隣の歯科医師との共同管理、⑥POCT検査機器の充実化、放射線読影専門医との連携、情報伝達のためのICT技術の利用、⑦後方連携体制…複数の在宅療養後方支援病院との連携――を踏まえた現状の確認、さらには今後の経営計画を立案していくことで、自院が提供する「診療の質」(付加価値)の確保・向上を目指すことが大切です。

一覧へ戻る