Q&A・よくあるお悩み事

経営戦略・事業運営

在宅医療の今後の展開についてアドバイスを。

地域包括ケアシステムが整備されてきていますが、地域によって状況はさまざまと聞いております。このシステムが浸透していない地域において病院が在宅療養支援病院として名乗りを上げた場合に、在宅医療にかかわってきた診療所としてはどのような戦略を立てていくべきでしょうか。(診療所院長52歳)

内科診療所を運営している医療法人です。デイサービスも開業し5年が経過し、経営も軌道に乗ってきていると考えております。介護報酬は引き下げられ、一般企業の参入、デイサービス、デイケアの乱立もあり、非常に厳しい環境に置かれてきていると感じています。今後の展開をどのようにすべきかアドバイスをお願いします。(医療法人理事長48歳)

すべての市区町村で実施される「在宅医療・介護連携推進事業」 本事業で中心的な役割を担うことで自院の立場を有利に導く

今回は、この2人の先生が共通して対応すべき課題として「在宅医療・介護連携推進事業」について紹介したいと思います。この事業は2025年までに地域包括ケアシステムを構築するためのもので、今年の5月から実施可能な市区町村から取り組みを開始し、2018年4月までにすべての市区町村で実施することになっています。両先生の所在する市区町村でも確実に実施することになりますので、この事業においてリーダーシップを発揮することが、地域において自院を有利なポジションに位置づけるために重要な要素となります。
その内容を以下に示します。

(ア)地域の医療・介護サービス資源の把握
地域の医療機関、介護事業者等の住所、機能等を調査し、これまでに自治体等で把握されている情報と合わせて、マップまたはリストを作成する。作成したマップ等は、地域の医療・介護関係者や住民に広く公開する。

(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応の協議
地域の医療・介護関係者等が参画する会議を開催し、在宅医療・介護連携の課題の抽出、解決策等の協議を行う。

(ウ)在宅医療・介護連携支援センター(仮称)の運営
地域の在宅医療・介護連携についての相談窓口を担う在宅医療・介護連携支援センター(仮称)の運営を行い、(エ)、(オ)、(カ)等の支援を行うとともに地域の医療・介護関係者等に対して、在宅医療・介護サービスに関する事項の相談の受付を行う。また、必要に応じて、退院の際の地域の医療関係者と介護関係者の連携の調整や、医療・介護関係者に対して、利用者・患者または家族の要望を踏まえた、地域の医療機関・介護関係者の紹介を行う。

(工)在宅医療・介護サービスの情報の共有支援
地域連携パス等の情報共有ツールや情報共有の手順等を定めたマニュアルを活用し、地域の医療・介護関係者等の間で、事例の医療、介護等に関する情報を共有できるように支援する。

(オ)在宅医療・介護関係者の研修
地域の医療関係者に介護に関する研修会の開催、介護関係者に医療に関する研修会の開催等の研修を行う。また、地域の医療・介護関係者が、多職種連携の実際等についてグループワーク等の研修を行う。

(カ)24時間365日の在宅医療・介護サービス提供体制の構築
切れ目なく在宅医療・介護サービスが一体的に提供されるよう、利用者等の急変時等の連絡体制も含めて、地域の医療・介護関係者の協力を得て体制の整備を計画的に行う。

(キ)地域住民への普及啓発
在宅医療・介護サービスに関する講演会開催、パンフレットの作成・配布等によって、地域住民の在宅医療・介護連携の理解の促進を図る。

(ク)二次医療圏内・関係市区町村の連携
同一の二次医療圏内にある市区町村が連携して、当該二次医療圏内の病院から退院する事例等に関して、都道府県、保健所等の支援の下、当該病院と協力して、退院後に在宅医療・介護サービスが一体的に提供されるよう情報共有の方法等を含む在宅医療・介護連携のために必要な事項について協議を行う。必要に応じて、同一の二次医療圏内にある市区町村が連携して、利用者等が急変時に診療する医療機関の確保等について協議を行う。

また、この事業は地域包括ケアシステムの構築も含めて在宅医療と介護サービスの両方を必要とする高齢者が増え続けることを予測したうえで実施するものであり、すでに自院のデイサービスが利用者から信頼を得られている状況にあり、本事業で中心的な役割を担えるのであれば、競合相手が増えたとしても大きな問題はないように思われます。

さらに、在宅療養支援病院も本事業のなかでは協力するべき存在として想定されています。しかも、一方で今後は在宅療養支援病院においては介護療養病床としてより入院機能を強化する形での役割が強く求められることになりそうです。病院に対しては競合相手ではなく協力相手として接することが重要になると思われます。

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