コラム

2026年度診療報酬改定:精神科診療所経営実務レポート

2026.2.24|医療政策医療経営

 

令和8年(2026年)2月13日の中医協答申および関連資料に基づき、精神科診療所経営者に特化した実務レポートを作成しました。

令和8年度診療報酬改定 実務レポート【精神科編】

本レポートは、2026年2月13日の中医協答申資料に基づき、精神科診療所の経営に直結する重要変更点を解説します。

今回の改定は、**「物価高・賃上げへの緊急対応」と「医療DX・サイバーセキュリティの必須化」に加え、精神科特有の「多職種協働(特に公認心理師)の評価拡充」と「早期診療・児童思春期対応の強化」**が大きな柱となっています。

 

① 精神科診療所に関係する主な変更点

精神科の「通院・在宅精神療法」や「心理支援」に関する要件が大きく見直され、専門職の活用が収益に直結する仕組みへと変化しました。

 

1.精神療法・心理支援の評価見直し(収益の核)

    • 通院・在宅精神療法(初診)の評価:
      精神保健指定医が初診時に60分以上の精神療法を行った場合、600点(新設区分)が算定可能になります。
    • 「心理支援加算」の拡充:
      対象疾患に神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害が追加され、適応範囲が大幅に拡大しました。
      点数が280点(現行250点から引き上げ)に見直されます(月2回まで)。
    • 「認知療法・認知行動療法」の職種拡大:
      新たに公認心理師が実施する場合の評価(330点)が新設されました。
      これまでは医師または医師と看護師の共同のみでしたが、心理職の単独実施(医師の指示下)が評価されます。

 

2.早期発見・児童思春期対応の強化

    • 「早期診療体制充実加算」の見直し:
      診療所向けの評価区分が設定され、初診から3年以内の患者に対して50点(それ以降は15点)が加算されます。
    • 「児童思春期支援指導加算」の新設・見直し:
      20歳未満の患者への多職種支援について、初診患者数などの実績要件に応じた評価体系(加算1:450点、加算2:500点など)に見直されます。

 

3.基本診療料の引き上げと「物価対応料」

    • 初・再診料の引き上げ: 基本点数が引き上げられます。
    • 「物価対応料」の新設: 物価高騰対応として、外来において初診時2点、再診時2点が加算されます。

 

4.医療DXとサイバーセキュリティ(必須要件)

    • 「電子的診療情報連携体制整備加算」の新設:
      従来の医療DX加算が再編され、初診時15点、再診時2点(月1回)などが算定可能になります。
    • 重要要件:
      算定には**「サイバー攻撃対策」**(厚労省ガイドライン準拠)が必須となります。
    • 向精神薬の処方:
      オンライン診療等で向精神薬を処方する際、電子処方箋管理サービス等での重複投薬チェックが要件化されます。

 

② 変更が精神科診療所の経営に及ぼす影響

今回の改定は、公認心理師や精神保健指定医を適切に配置・活用できる診療所には「増収」の大きなチャンスですが、DX対応や資格者の確保が不十分な場合は競争力が低下します。

 

1.収益構造への影響:心理職の稼働が収益化

    • 増収要因:
      これまで持ち出しコストになりがちだった公認心理師によるカウンセリング(心理支援加算、認知行動療法)が、対象疾患拡大と新点数により明確な収益源となります。
      また、初診時の指定医による長時間対応が高く評価されるため、初診枠の運用戦略が重要になります。
    • ベースアップ効果:
      再診頻度が高い精神科では、初・再診料の引き上げと「物価対応料」「DX連携加算」の積み上げにより、外来単価の底上げが見込めます。

2.算定できる診療所とできない診療所の差

    • 指定医・公認心理師の有無:
      精神保健指定医の有無や、公認心理師の配置状況により、算定できる点数に大きな開きが出ます(初診600点やCBT 330点など)。
    • DXの壁:
      サイバーセキュリティ対策を行わないと、再診ごとのDX加算(月1回)を取りこぼすことになり、患者数が多いクリニックほど損失が大きくなります。

3.患者動向とコスト

    • 若年層・軽症層の増加:
      心理支援加算の対象拡大(神経症・ストレス関連障害)により、うつ病手前の患者層や休職者へのケアが強化され、これらの患者層の定着が見込まれます。
    • 人件費:
      ベースアップ評価料の活用が求められるほか、公認心理師や精神保健福祉士の採用ニーズが高まり、人件費の相場が上昇する可能性があります。

 

③ 取るべき対策

精神科診療所経営者が実行すべきアクションを優先順位順に提示します。

 

【優先度:高】すぐに確認・着手すべき項目(1〜2ヶ月以内)

    • サイバーセキュリティ対策の実施:
      新設の「電子的診療情報連携体制整備加算」を4月から算定するため、ベンダーに連絡し、UTM導入やバックアップ体制が厚労省ガイドラインに適合しているか確認・改修してください。
    • 公認心理師の業務フロー見直し:
      「心理支援加算」の対象疾患拡大(神経症等)と「認知行動療法」の新設(330点)に合わせ、医師から公認心理師への指示出しフローや予約枠を整備してください。算定漏れを防ぐためのカルテ記載要件も確認が必要です。
    • 賃上げ計画の策定:
      スタッフ確保のため、「ベースアップ評価料」を活用した賃上げ計画を策定し、届出を行ってください。

【優先度:中】半年以内に整備すべき体制

    • 初診予約枠の再設計:
      精神保健指定医による60分以上の初診(600点)を算定するため、指定医の担当枠と予約時間の調整を行ってください。
    • 早期診療体制の届出:
      「早期診療体制充実加算」の施設基準を確認し、地域の連携体制や時間外対応等の要件を満たしているか点検・届出を行ってください。

【優先度:低】中長期で取り組むべき戦略

    • 児童思春期・専門外来の検討:
      児童思春期支援指導加算などの評価が高まっているため、専門外来の設置や、地域の学校・行政との連携強化を検討し、若年層の集患ルートを確立してください。

 

まとめ

令和8年改定は、精神科診療所にとって**「心理職の活用」と「DX対応」**が経営の明暗を分けるポイントです。

公認心理師による技術料が拡充されたことを好機と捉え、多職種連携による診療体制を構築することで、単価向上と診療の質向上を同時に実現することが可能です。
まずは、DX加算のためのセキュリティ対策と、新点数に対応した院内オペレーションの再構築を急いでください。

 

 

 

【本レポートの活用にあたって】

本資料は、2026年2月13日付の中医協答申資料をソースとして 、最新の生成AI技術を用いて当会が独自に分析・編纂したものです 。
速報性を重視しているため、実際の運用や解釈が今後の官報告示等で異なる場合があります 。
投資や雇用などの重要な経営意思決定に際しては、本レポートの示唆を一つの指針としつつ、医業経営の各専門家(コンサルタント、税理士、労務士、弁護士等)による最終的な確認と指導を受けるようにしてください。

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