コラム

既に起こった未来 2040年問題を考える その1

2020.5.20|医療政策医療経営

厚生労働省の社会保障政策は、団塊の世代が全て75歳以上の後期高齢者となる「2025年」対策は一段落し、団塊ジュニアの世代が全て65歳以上の高齢者となる「2040年」対策にシフトしています。では2040年とはどのような年なのでしょうか? それはこれまで歴代の政府が先延ばしにしてきた積年のツケの結果が明らかになる年です。

まず人口の減少と地域間格差、そして少子高齢化の更なる進展による人口構造変化です。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口・世帯数によれば、2040年には日本の人口は、2020年の約1億2‚500万人から約1億900万人に減少します。2040年は国民の3人に1人以上が65歳以上、5人に1人が75歳以上になります。一方で生産年齢人口(15~64歳)の減少が加速し、全人口の半数強の割合にまで減少します。

医療需要は、厚生労働省の資料によれば、肺炎、心疾患、脳血管疾患等の疾患の受療率の高い75歳以上人口の増加で当面は増加しますが、侵襲性の高い手術等の適用患者は減少することは予想されます。
介護需要は、平成30年版高齢社会白書によれば、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が2.9%であるのに対して、75歳以上では各々9.0%、23.5%と高まるため、要介護認定者数は大きく増加します。加えて「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によれば、認知症有病率は加齢とともに増加します。
また世帯主が75歳以上の世帯が1,217万と全体の4分の1になり、75歳以上の一人暮らしは500万人を超えます。

▶手術等の治療を必要とする高度急性期・急性期の患者数の減少
▶小児科、産科の患者の更なる減少
▶複数疾患をもつ高齢患者の更なる増加
▶医療機関に独力で来院可能な外来患者の減少、往診もしくは在宅医療が必要な患者数の増加
▶要介護者の増加、要介護・認知症の患者の増加、自宅への 退院が困難な患者の増加

高齢者数が増加する一方で、就業者数は2018年から2040年までに6,580万人から5,650万人と、約930万人減少すると予測されています。ただ医療介護分野については需要増加に対応するために823万人から1,060万人と、約240万人追加で必要とされます。あくまで推計ですが、このままでは2040年には労働者の5人に1人が医療・介護職に就かないと対応できないということになります。

▶医療及び介護分野における労働者の大幅な不足
▶他産業との間での人材獲得競争による給与水準の上昇

次に日本全体でみた東京圏とその他地域及び同一都道府県内の県庁所在都市とその他自治体の人口不均衡が進展します。
2014年に日本創成会議が、出産年齢の女性が2010年から2040年の間に5割以上減少する自治体を消滅可能性自治体と呼び、その数が896に達すると発表し衝撃を呼びました。高齢者人口が減少する地域の医療需要は減少の一途であり、医療機関の経営は成り立たなくなります。
▶地方の人口減少による病院の規模縮小、統合再編、閉鎖。
 診療所の閉鎖
▶地域住民の医療機関へのアクセスの悪化。医療過疎地の増加
▶都市部における診療所増加による競争激化最後に、国民皆保険を支えている財政の問題です。

2018年5月に経済財政諮問会議に厚生労働省などから提出された資料では、2040年の社会保障給付の総額は190兆円。
121兆円であった2018年の1.6倍になります。介護は2.4倍、医療は1.7倍です。
医療や介護を支える財源は、保険料、税金と一部負担金です。
生産者年齢人口が減れば、給与水準がよほど上昇しない限り、所得税や社会保険料の徴収額は減少するでしょう。また消費者が減少することで消費税も伸び悩むでしょう。一部負担金の引上げは、医師会は反対しています。つまり2040年の医療や介護の需要は増加する一方で、財源確保は非常に困難になることは容易に予想できます。
▶財源不足による医療や介護の報酬単価抑制、公的保険の対象範囲縮小

経営の神様とまで呼ばれているピーター・ドラッカーは、「人口構造の変化は、既に起こり、後戻りのないことであって、10年後、20年後に影響をもたらす『既に起こった未来』に備えることは可能である」と言っていますが、このままでは2040年は相当厳しい未来になりそうです。

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