コラム

実家の相続手続きは早めに。 4月1日からの 不動産登記義務化

2024.1.20|その他

ドクターは、大学医学部入学から、卒業後の臨床研修、就職、場合によっては開業と、実家から離れた場所で生活している方が多いように感じます。実家の不動産を将来どうすれば良いのか、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

筆者も大学入学以降はずっと首都圏に住んでおり、遠方にある実家は両親が亡くなった後は空き家状態にしています。相続時の財産分与で私が全て引き継ぐことにし、地元の法務局に行って不動産登記内容を調べました。土地、家屋の他に田畑や山林を所有しているのですが、田舎であるためか場所の特定や土地の境界などが分からない内容でした。費用をかけてまで名義変更をする意味がないと考えて、10年以上そのままにしています。

同様の人が多いのか、全国的に被相続人が亡くなって相続が発生したとき相続人が名義変更をせず、長期にわたって放置する“所有者不明土地”が増加しているようです。学識経験者などで構成する「所有者不明土地問題研究会」の推計によると、全国の所有者不明土地の面積は2016年時点で410万ヘクタールと、九州の面積を上回っているとのことです。

対策として政府は、これまでは任意であった土地・建物の登記を義務化すべく、「不動産登記法」を改正し2024年4月に施行します。施行後は相続発生から3年以内に所有名義を、故人から相続人に変更する必要があります。既に相続が発生している場合は2027年3月末が期限になっており、登記をしなければ10万円以下の過料になる場合があるとされています。

登記をする際の登録免許税(相続による名義変更の場合、不動産の評価額×0.4%)や司法書士への報酬といった登記費用を負担したくない方も多いでしょう。

相続登記の登録免許税については、相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合(例:亡くなった祖父の土地を相続した父が相続登記しないまま死亡し、子が相続した場合等)や、不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税については、2025年3月31日まで免税措置が適用されます。

また自分で法務局へ行って登記手続きを行えば、司法書士の報酬が発生することもありません。ただし登記の申請については、不動産のあるエリアを管轄する法務局でなければ受理してもらうことができません。

「不動産登記法」の改正では、不動産所有者の住所等に変更があった場合に、住所等の変更登記の申請が義務化され、2026年4月までに施行されます。引越し等によって登記名義人の住所等に変更が生じた場合は、その住所等の変更日から2年以内に変更登記の申請をしなくてはなりません。正当な理由なく申請義務を怠った場合は、5万円以下の過料の適用対象となります。どこまで厳格に適用されるのか分かりませんが、転勤による住所変更が多いドクターの場合は、こちらの方が影響は大きいでしょう。

ただ法務局が職権で住所等の変更登記をする仕組みも、2026年4月までに施行されます。法務局の登記官が、個人の場合は「住基ネット」、法人の場合は「商業・法人登記システム」から取得した情報に基づいて、職権で変更登記ができるようになります。費用負担等、詳細については未定ですが、個人の場合はDV被害者等への配慮や個人情報保護の観点から、登記名義人の了解を得た場合に限定されるようです。

法務局は国の出先機関なので、各市町村にあるわけではありません。そのような背景もあってか、主な手続はインターネットを利用して行うことができます。

ただし相続の登記をオンラインで申請する場合には、添付情報として被相続人(死亡した方)の出生から死亡までの経過が記載された戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)等が必要になるため、現時点では相続の登記をオンラインで完結することはできません。オンラインで申請する場合には、後日に法務局(登記所)に郵送または持参することで、手続を進めることが可能となっています。

法務省によれば、「不動産登記は,わたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか,所有者の住所・氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し,これを一般公開することにより,権利関係などの状況が誰にでも分かるようにし,取引の安全と円滑をはかる役割をはたしています。」とあります。

筆者が考えるに、全国で九州の面積を上回っているほどの所有者不明土地があること自体、不動産登記制度に対する国民の理解はあまりなく、根幹から変えていくべきなのではないでしょうか。例えば土地や建物の所在は、Googleマップのような仕組みを利用すれば一目瞭然ですし、田畑や山林などの場所の把握もしやすくなります。また紙の証明書をわざわざ法務局にお金を払って発行してもらわなくても、オンラインで誰でも確認ができるのであれば問題はないように感じます。デジタル庁に期待したいところですが…。

(注記)本文の内容は、2023年12月1日時点の公開情報に基づいて作成していますが、当会ではその正確性等を保証するものではありません。また本内容に従って決断した行為に起因する利害得失はその行為者自身に帰するもので、当会は何らの責任を負うものではありません。

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