コラム

魅力があってもわからない金融商品には投資をしない

2022.5.20|マネー

もし年利率10.21%(税引前)と書かれているようなパンプレットがあれば、誰もが目を留めるでしょう。2022年2月16日~3月9日まで販売されていた「メルカリ株価連動債券」という仕組債の利率です。
通常の「債券」は、保有期間中に定期的に金利収入があり、償還期日には元本が100%戻るリスクの低い金融商品です。最も代表的な債権は国債で、3月時点で年利率は0.12%以下です。
同じ債券でも仕組債は、一般的な債券にオプションやスワップなどのデリバティブ(金融派生商品)を組み込んだ債券です。元本や金利の支払について、参照対象とする株価、為替、その他各種指数などの金融指標の変化による条件が付けられることによって、条件の付いていない債券よりも高い利回りが期待できる一方で、市場の動向次第で元本が大きく減額される可能性のある特殊な商品です。
専門用語による説明ではわかりづらいですが、紹介した商品の場合は(株)メルカリの株価が大幅に下がった場合、大損してしまう可能性がある商品です。通常の「債券」と比べると非常に高い利子収入を得られる可能性がある一方で、株式と同様の株価下落リスクがあるのです。
証券・金融商品あっせん相談センター※での紛争解決手続き終了事例のうち、仕組債は増加傾向で最近では最も多くなっています。2021年10~12月期の手続き終結事例をみると、「営業担当者は、仕組債の勧誘に際し、リスクを詳しく説明することなく、償還まで保有すれば元本割れしない旨を強調し、申立人に仕組債を購入させた。申立人は、市況の悪化により大きな損失を被った。説明義務違反等を起因として、被った損害金約○○百万円の賠償を求める」というような訴えが掲載されています。
※株や投資信託、FXなど金融商品の取引に関するトラブルについて、金融商品取引業者の顧客(金融商品取引の利用者顧客)からご相談や苦情を受け付け、公正・中立な立場で解決を図る機関。相談や苦情が解決しない場合は、あっせん委員(弁護土)によるあっせん制度(紛争解決業務)も運営。
センターが公表している2020年4月から2021年3月までに損害賠償請求された仕組債の金額を合計すると、12億円超にもなっています。訴えていない購入者もおそらく多くいることから、この金額は氷山の一角といえるでしょう。
魅力的な金利の上に、商品分類が債券であることなどの理由で、商品の内容をよく理解しないまま勧められるままに購入しているケースが増加しているのではないかと想像します。

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