コラム

開業医は引退にどう備えるべきか? 事業承継は可能か?

2020.11.20|マネー

皆さん、こんにちは。ジーネット㈱代表取締役の小野勝広です。今回は「開業医は引退にどう備えるべきか?事業承継は可能か?」というテーマです。

2018年の時点で診療所に勤務する医師の平均年齢は60歳に達したと言われていました。その一方で新規開業する医師の平均年齢は日本医師会の発表によると41.3歳と言われています。
2020年も終わりに近づきつつある中で、新型コロナの影響で閉院を決断されるベテラン開業医も少なくないと伺います。また新規開業の準備をストップしたとか、延期したというケースも増えています。
おそらく、しばらくは閉院と新規開業のバランスは前者の方が多いかもしれません。
こうなるとベテラン開業医の先生方は、いつ、どのように閉院をするのか?日本医師会も事業承継を推進しているようですが、果たして本当に可能なのか?このようなことをお考えの先生は少なくないかもしれませんね。

まず、閉院についてです。開業医に定年はありませんから、本来は心身に問題がなく、通院してくれる患者さんがいらっしゃる間は、続けていくのがベストだとは思います。
ところが私のところにも閉院や事業承継のご相談が入るのですが、実は非常に辛いケースがあります。
それは院長先生がお亡くなりになり、残された奥様が傷心の中で閉院の手続きを行い、事業承継のご相談にいらっしゃるというケースです。
特に医療従事者ではない奥様の場合、何をどうして良いのかわからない…、顧問税理士さんにいろいろと促され何とか閉院の手続きはしたけれども、これからのことは全く頭に浮かばない。医師会を頼ってみたけど、受付はしてくれても、引き継いでくれるドクターは現れず、土地建物やテナントをこのままにしておく訳には行かないし…と、私の目の前で泣き出してしまう奥様も…。

正直に申し上げて、年に数件こういったお話があるのです。
ですから、とにかくベテラン開業医の先生にお伝えしたいのは、あまり考えたくはないことであるのは百も承知ですが、残されたご家族のため、奥様のために、元気なうちに万が一に対する備えは打っておいて頂きたいのです。
例えば、ご自身亡き後、閉院を希望するならば税理士に指示し、事業承継を希望するなら事業承継に精通した専門家に早めに相談をしておいた方が良いですね。
また、承継にもいろいろあり、まず親子間承継。最近ではお子様が継ぎたくないというケースも少なくないようです。
家族会議を開いて、よ~く話し合っておくのが賢明ですね。

もうひとつは第三者承継。前述したように医師会も民間企業と連携して対策を進めてはいますが、軌道に乗ったという話は聞きません。
ここで断言します。第三者承継は、そんなに簡単ではありません。理由は様々ありますが、今の診療所を開院してから20~30年目ですよね?その頃とは街の様子は変わり人の流れも変わっているでしょう。また患者が求める医療の形も変わり、昔のような診療スタイルでは集患しにくくなっていると思われます。
その他、医療機器は買い直し、リフォームも必要で、スタッフさんは自分より年上のベテランばかり、最盛期より患者は減り、継続的に通院してくれているのは院長と同世代の患者が中心で、昔は人通りの多い場所だったけど今は閑散としている立地…。おまけに承継に必要な費用が意外と大きくて…。
このような状態では、若い先生が第三者承継してくれる可能性は高いとは言えません。
ではどうすべきか?私は2点考えられると思います。

ひとつは数年計画で承継する医師に徐々に譲っていく方法です。最初は定期非常勤でスタートし、双方の相性を確認しながら日数を増やし、常勤医師になってもらい、ご自身は徐々に日数を減らし、スムーズに移行する形ですね。
もちろん、そういう医師を探すことも大変なのですが、それこそ5年、10年単位で、計画的に動かれるのが良いと思われます。
もうひとつは診療所の承継ではなく、医療圏を承継していくスタンスを取っていく方法です。個人的にはこれがベストと思います。この話は長くなりますので、また別の機会にします。

承継とか、ご自身の引退とか、それこそ生死の問題など、毎日忙しく診療なさっている中で、考える暇もないし、考えたくもないと推察します。しかしある程度の方向性を決めて伝えておかないと、残されたご家族が苦労するのです。
また承継するなら、数年単位の準備が必要です。これに対する備えも必要です。閉院して、全てを精算するなら良いですが、地元の患者さんたちは遺してほしいと思うはずです。そういった地域社会に対する責任も含めて、早め早めにご検討なさることをおススメします。

一覧へ戻る