投資は自分の心、欲や恐怖との闘いです
2021.3.20|マネー
投資をしないリスクを理解できても、昨年のようにコロナ禍で株価が急激に下がり、実態経済は充分に回復していないのにもかかわらず株価が大幅に上昇したりすると、株式投資は「怖い」、「よくわからない」と感じるのは当然です。
なぜそのような状況が起こるのか? 金融市場についての基本的な知識があれば、理解はできます。ただ普段の生活でも、たとえ頭でわかっていたとしても、できないことは沢山あります。投資の世界も同様です。欲が絡むために、より難しいかもしれません。
人は投資における意思決定において、時にセオリーに反する不合理な選択・行動をしてしまうことがあります。行動経済学の分野で理論化されており、「人は同額の利益から得る満足よりも、損失から受ける苦痛のほうが大きいため、損失を回避することを優先する」というプロスペクト理論が代表的です。
図で説明しますと、縦軸は心理的な価値で、上にいくほど嬉しく、下にいくほど辛くなります。横軸は金銭的な価値で、交点の左側ほど損失が大きく、右側ほど利益が大きくなります。
実験によると図1のように、同じ10万円でも値下がりして損をする辛さは、利益が出る嬉しさの1.5~2.5倍とのことです。
図2は10万円の利益が出ている状態です。せっかくの利益が値下がりして失ってしまう辛さの方が、さらに10万円値上がりする嬉しさよりも大きくなっています。そのため人は、早めに利益を確定するために売却してしまう傾向があります。
図3は10万円の損失が出ている状態です。さらに値下がりして損失を倍に膨らましてしまう辛さよりも、値が元に戻る嬉しさが大きくなっています。そのため人は、売却して損失を確定してしまうよりも、そのまま保有し続けようとする傾向があります。
私も経験はありますが、株式投資の場合、株価が値上がりしている時は嬉しくなり、頻繁に株価を確認します。ただ株価は値下がりもしますから、売るか売らないかで迷います。値下がりする日が何回か続けば、利益が無くなるのが惜しいために短期間で売ってしまいがちです。成長を続けているような優良な会社の株式の場合、中長期的な利益獲得の機会を結果的に逸してしまいます。
一方で株価が値下がりしている時は、株価を見るのが辛くなり放置してしまいます。しかしこれは非常に危険です。その後も値下がり続けた場合、気付いた時には大きな損失を抱え塩漬け(売るに売れない状態)になってしまったりします。
このように小さく儲け、大きく損を出すような売買が習慣づ投資は自分の心、欲や恐怖との闘いですいてしまいますと、損失が増えてしまいます。株式投資に良いイメージをもてないまま止めてしまう典型的なパターンです。
短期的な損得に一喜一憂せず、冷静に長く投資を続けるためには、陥りがちな心理をあらかじめ知っておくことが大切です。ただ分かっていたとしても、実行するのはなかなか難しいと私も実感しています。
日本における市場取引の歴史は、遡ること江戸時代の大阪での米取引からと言われていますが、市場取引における心理面での難しさは、時代を経ても変わりません。日本証券業協会のホームページに、遠く米相場の時代から言い伝えられてきたものも含めた相場格言集が掲載されています。投資は本来、客観的な情報に裏付けされた合理的な行為でなけれ
ばなりません。にもかかわらず多数の投資家が古い格言を口にするのは、投資行為に占める心理的要素が大きく、最終の決断に際して何かに拠りどころを求める、その役目を格言が果たしているといえそうです。
合理的な判断を下すために必要なのは、「事前のルールを明確にしておくこと」と「ルールを守ること」です。ルールには、購入する時点で値上がりした場合と値下がりした場合の売却価格を事前に決めておく方法や、株式チャート等の値動きの変化に合わせた基準を作って売買をする方法などがあります。
また株価の変動に一喜一憂せずに、信念をもって保有し続けるという方法もあります。持ち続けるというのも1つのルールですが、そのためには持ち続けても大丈夫な銘柄を探すことができるという大前提があります。
投資の成功は「安く買って高く売る」という非常にシンプルな営みですが、成功をし続けるのはプロでも不可能です。その前提のもと投資を始めるとした場合にお奨めするのが、金融商品を一定の金額で定期的に購入するという、非常にわかりやすいルールの「積立投資」です。詳細は次号で説明します。
