コラム

医師に必要なリーダーシップを身に付ける方法【前編】

2023.9.20|医療経営

医師は臨床の現場に出て経験を積むにつれて、チーム医療のリーダー、院内の委員会等の会議の議長、診療科を統率する科長、医局長、院内の運営管理をする院長、経営管理をする理事長など、立場は様々ですが否が応でもリーダーを務める機会が出てきます。

筆者はこれまで製造業や金融業、コンサルティング業などの企業に勤めた経験がありますが、一般企業に勤める会社員よりも医療機関内で働く医師のほうが、勤務先への帰属意識が必ずしも高くない医師や、看護師や薬剤師などの専門職の他職種を率いなければいけないという点で、リーダーの役割の困難度は高いように思います。

図らずも立場上リーダーになってしまったとしても、リーダーはあくまでも組織内における地位や肩書でしかありません。実際にリーダーがリーダーシップを発揮して役割を果たせるかどうかは、個々人の能力次第です。

 

世の中にはリーダーシップについて悩んでいる人が多くいるためか、大きな書店に行けばリーダーシップをテーマにしたコーナーがあります。例えば、旧・松下電器産業の創業者の松下幸之助や、ソフトバンクグループの孫正義などの成功した企業経営者の伝記などは読みやすいのですが、個性が強すぎるために参考にしづらいでしょう。一方で学者・研究者などによる膨大なリーダーシップ研究から生まれた理論を解説するような本の場合は、内容が抽象的で難しいかもしれませんが、自分に適合したスタイル、所属する組織に適合したスタイルを見つけることができるかもしれません。

前号では「サーバントリーダーシップ」について紹介をしましたが、本号では日本におけるリーダーシップ理論の先駆けとして社会心理学者の三隅二不二氏が提唱した「PM理論」について説明します。

 

「PM理論」では、リーダーシップは「P機能(Performancefunction:目標達成機能)」と「M機能(Maintenance function:集団維持機能)」の2つの能力要素で構成されており、P機能とM機能の2つの能力要素の強弱により、リーダーシップのタイプを表のように4つに分類できるとしています。

出典:エン・ジャパン(株)のeラーニングサイト「エンカレッジ」より

「P機能」とは、メンバーへの指示や叱咤激励など、目標達成をするために組織に及ぼす働きかけです。例えば、「目標達成のための計画を立てる」「立てた計画を遂行するために、メンバーに指示を出し、支援をする、注意する」などが該当します。

「M機能」とは、組織内の人間関係に配慮し、集団を維持するために組織に及ぼす働きかけです。「メンバー間の緊張を和らげる」「部下の悩みを聞き、アドバイスする」など、チーム内のメンバーに対するフォローや気遣いなどが該当します。

分類した4つのタイプを簡単に説明すると、次のようになります。なお詳細は表をご覧ください。

・PM型(P・Mともに大きい)
目標を達成する力があると同時に、集団を維持・強化する力もある。理想的なリーダーシップのタイプ。
・Pm型(Pが大きく、Mが小さい)
目標を達成することができるが、集団を維持・強化する力が弱い。
・pM型(Pが小さく、Mが大きい)
集団を維持・強化する力はあるが、目標を達成する力が弱い。
・pm型(P・Mともに小さい)
目標を達成する力も、集団を維持・強化する力も弱い。

 

PとMの両方とも備えてリーダーシップを発揮できれば理想ですが、人にはそれぞれ得手不得手があります。自分の得手不得手をPM理論で確認することで、組織においてリーダーシップを発揮するために何が必要かを知ることができます。

三隅二不二氏は著書の『リーダーシップ行動の科学』(有斐閣)において、PとMにあたる項目として24個を設定しています。この測定尺度を使ってリーダーシップ力を2軸で評価すれば、自らの強み・弱みを把握することができます。

例えば「自分はPの行動特性が強いが、Mの行動特性が弱い」と認識した場合は、「Mの行動特性を高めるために、もう少しメンバーをフォローしていこう」と自分の行動を振り返りながら、足りない行動特性を高めていくために何が必要かを考えていくことができます。もし自分では対応が難しい場合には、「Mの行動特性が
強い人」をサブリーダーに配置することで、Mの行動特性を補ってもらうなどの対応ができるでしょう。

リーダーシップで悩んでいる方は、PM理論を参考にして自己診断をされてはいかがでしょうか。

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