コラム

WBC「侍ジャパン」から学ぶ チームマネジメント

2023.7.20|医療経営

3月のワールド・ベースボール・クラシックは、侍ジャパンの優勝でかなり盛り上がりました。優勝の要因について筆者も様々な解説を聞きましたが、医療機関の経営者に参考になる内容として、「チームメンバーが共感できるビジョン」「監督のリーダーシップ」「心理的安全性の高いチームづくり」の3つを挙げることができるのではないかと思います。

まず「チームメンバーが共感できるビジョン」ですが、栗山監督は昨年夏に大リーグの各球団や所属選手を視察して回りました。
各選手に尋ねたのは「WBCへの出場意思」ではなく、「日本球界の未来をどう考えているか」ということでした。栗山監督は、自分自身が感じる野球界の現状や今後などに対する思いを選手に伝えました。
もし栗山監督が「優勝するためにぜひ参加して欲しい」というような伝え方をしていたならば、参加をしなかった選手がいたのではないでしょうか。
医療機関の人材採用においても、「地域で一番の医療機関になるために協力して欲しい」と伝えるよりも、「地域住民は○○で困っている。地域のために不足している医療機能を提供したい。
そのためにあなたの力が必要だ」のほうが、おそらく相手の心に響くでしょう。

次に「監督のリーダーシップ」ですが、栗山監督はもともと野球のエリート選手ではありませんでした。そのため従来の支配型リーダーシップのスタイル、厳しく上からトップダウンで指示するような方法では、おそらく選手は動いてくれませんし、実績を残し自律している選手には支配型リーダーシップはおそらく通用しません。
リーダーシップのスタイルは様々ですが、栗山監督のスタイルをあえて既存の類型に当てはめれば「サーバントリーダーシップ」が近いと思います。サーバントリーダーシップは、部下を支配するようなものではなく「まず相手に奉仕し、その後にチームを先導するリーダーシップ」スタイルで、その特徴は以下の9個です。

 

サーバントリーダーシップがうまく機能すると、メンバーが上司からの指示を受けて義務感で動くのではなく、自主性や主体性を発揮して行動します。

最後に「心理的安全性の高いチームづくり」ですが、心理的安全性が高いチームでは、チーム内のコミュニケーションが前向きな方向で活性化していき、より良い解決策やイノベーションの創出、助け合いによる実行力の強化などが起きやすくなります。

若手選手が大谷選手から「ため口で来い!」と言われたとのエピソードがありましたが、上下関係に厳い体育会系の名残がまだまだ染みついている日本選手にとって、心理的安全性を高める効果があったのではないかと思います。
また栗山監督はチームにキャプテン制を敷きませんでした。
キャプテンをひとり決めると、他のキャプテンシーを持つ選手たちは自分の立場をわきまえキャプテンに遠慮してしまい、逆に選手間や選手と監督の間のコミュニケーションが滞る可能性もありそうです。

チーム力向上の鍵となるリーダーシップと心理的安全性の関係に関する九州大学の研究によれば、リーダーシップは目標共有、相互協力に効果を発揮し、心理的安全性は、目標共有、相互協力、コミュニケーションに効果を発揮するようです。その結果、チームパフォーマンスは向上します。
研究によれば、高業績チームのリーダーの基本的な心構えは、第一にメンバーに興味を持ち信頼する、第二にメンバーが主役(自分が主役になろうとしない)、第三に多様性を認める(自分のみが正しいと思わない)の3つのようです。

院長としては、部下などに任せると不安、自分でやらないと部下からリーダーとして認められないのではないか、といった意識から、部下などに権限委譲をするのが難しいと感じることが多いと思います。
ただ医療や介護の現場においては、患者やその家族を中心にして常にチームの多職種のメンバー間で連携・情報共有しながら仕事を進める必要性がどうしても出てきます。他業種の現場よりも、より難しい状況で高いレベルでチームを機能させなければなりません。「侍ジャパン」のチームマネジメントは、全く分野は異なりますが、経営者、リーダーとして参考になる部分もあるのではないでしょうか。

 

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