コラム

黙って離れていく患者を 繋ぎとめるための満足度調査

2020.5.20|医療経営

「患者さんたちは自院のことをどう思っているのか」は、院長ならば誰もが気にされるところでしょう。例えば厚生労働省の「平成29年受療行動調査」によれば、外来患者の満足度は、「満足」との回答は待ち時間や診察時間を除けば50%台、「不満」は待ち時間を除けば10%未満です。約3分の1程度が「ふつう」と回答しています。
この結果はあくまで全国の調査対象の医療機関の平均値ですが、仮に自院の調査結果とみなした場合に、「満足が50%を超えているから良かった」と考えて思考を停止させてはいけません。なぜなら「ふつう」と回答している患者さんは、「満足」な水準のサービスを提供している医療機関の存在を知れば、簡単に切り替えてしまう可能性があるからです。
医療機関によっては患者満足度調査を実施したり、ご意見箱を置いたりして、その結果をホームページや、院内に掲示しています。調査結果もさることながら、患者さんから受けた指摘への対応、解決に向けた真摯な姿勢などが、患者さんや住民にとって医療機関選びの参考になります。「不満」をもつ患者さんの不満解消はもちろんのこと、「ふつう」と考えている患者さんも「何か不満なことがあっても、この医療機関は訴えれば真摯に対応してくれる」というように信頼を置いてくれるのではないでしょうか。

少し古い資料ですが、図表は「よい医者のイメージ」です。分かりきっていることかもしれませんが、改めて自院においてできているかどうか確認されると良いでしょう。
医師のコミュニケーション力に関わる事項が上位を占めていますが、コミュニケーションは言葉によるものと、言葉以外のものとに分けられます。言葉以外のものとしては、①患者さんとの位置関係や姿勢、②医師の表情や身振りなど、③話し方の調子や声の大きさなどがあり、効果的に使うことで、言葉によるコミュニケーションの信頼性を高めることができます。ただ、それらのスキルは簡単に身につくものではありませんので、内部のスタッフに率直な意見を言ってもらったり、第三者の意見をもらうために外部の研修を受けるなどされたりしても良いかもしれません。

患者満足度の調査結果は、よほどのことが無ければ医療機関間での格差はほとんどありません。なぜならそもそもその医療機関を患者さんとして選択しているわけなので、程度の差はあれ大多数の患者さんは「治療結果に満足」し、「医師やスタッフに感謝」しています。
そのため患者満足度調査は、他院と比較するよりも、自院内で継続的に実施して経過観察に用いるのが良いでしょう。1年もしくは半年ごとに同じ調査方法で実施して推移を見守ると、職員の入れ替わりや配置転換、運営方法の変更など、医療機関の施策と満足度の変化が一致するケースも多く、組織運営面で参考に
できます。

患者満足度調査を実施する際には、とても重要な2つの設問があります。

再利用意向
Q.あなたは、当院をまた利用したいと思いますか?

知人推奨意向
Q.あなたは、ご家族やご友人に当院をすすめますか?

まだまだこのようなシビアな質問を調査項目に入れる医療機関は少ないですが、この2つの設問は重要です。お感じのように再利用意向と知人推奨意向との間には、大きな違いがあります。
例えば、「自分は少し不満を感じているけれども、これまでずっとかかってきているし、今さら他の医療機関に変えるのも面倒なので、我慢してこれからも通院しよう。でも他の人に薦めるのはちょっと…」というように考えている患者さんも中にはいるでしょう。マーケティング用語の「ブランドスイッチ(別のブランドやサービスに乗り換えること)」のハードルがある状態だと言えます。ハードルが低い患者さん、具体的にはまだ1回しかかかっていない患者さんや、診療間隔が数年も空いているような患者さんは、既に他院にスイッチしている可能性もないとは言えません。

再利用意向と知人推奨意向のそれぞれの絶対値の高さも重要ですが、2つの値の差が大きな場合も注意が必要になってきます。また知人推奨意向の割合が高ければ、当然クチコミが増え、新規の患者さんの増加に繋がっていく可能性があります。
患者満足度調査の実施はかなり労力のかかることではありますが、患者さんとの双方向のコミュニケーションを図る機会、自院が気づいていない問題に気づく機会、患者さんが黙って離れていくのを予防するための重要な手段と考えて、実施されることをお勧めします。

一覧へ戻る