コラム

マクロ環境からみた 医師・歯科医師の将来の年収見通し

2022.9.20|医療経営

昨年スタートした岸田文雄内閣の看板政策のひとつが「成長と分配の好循環」で、看護、介護、保育などの現場で働いている人の収入増加策が実行されました。
看護師の賃上げについては、コロナ医療などで地域において役割を担っている医療機関に勤務する看護職員等に限定されましたが、10月以降は診療報酬本体を0.20%引き上げることになっています。
医療機関の主な収入源は保険診療による収入であるため、職員の年収アップは診療報酬改定の影響を大きく受けます。2年毎の改定にあたって、医療機関の財務状況や医療職の年収等の状況を勘案するために、医療経済実態調査が実施されています。
直近の調査結果をみると10年以上前から医師・歯科医師の年収の増加率は、看護師や他職種よりは高いのですが、非常に低くなっています。その原因はどこにあるのでしょう?
一つ目の原因は、財源の制約から医療費の総額の伸びが抑え続けられているからです。
図表の国民医療費の財源別内訳をみると、公費いわゆる税金が38.3%、保険料が49.4%、患者負担が11.7%になっています。
公費については、コロナ禍以前から日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も財政状況に問題を抱えていました。コロナ対策で更に悪化し、加えてロシアによるウクライナ侵攻等の影響で自民党は防衛費をGDP比2%に引き上げることを公約にしましたので、将来的に大幅な増税を実施しない限り医療費に財源を回す余裕はほとんどないでしょう。
保険料については、大まかに言えば“保険料総額≒平均年収×保険料率×労働者数”ですが、生産年齢人口は減少しています。平均年収と保険料率のアップがなければ、将来的に現状維持すら難しくなります。
患者負担については、現役世代は既に3割負担であり、更に引き上げることは社会保険としての意義を考えるとかなり困難なように思われます。2022年10月1日から75歳以上でも一定以上の所得がある人の医療費の自己負担割合が、1割から2割に引き上げられますが、財源を増やすためには後期高齢者の更なる負担割合のアップしか残されていません。
以上、財源の将来の見通しを考えますと、医療職の給与の原資の増加はかなり厳しいことがわかります。
二つ目の原因は、国民医療費に占める人件費以外の費用の増加です。

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