医療機関の休廃業・解散の増加と 承継開業という選択肢
2022.5.20|医療経営
帝国データバンクの調査によれば、2021年の「医療機関の休廃業・解散」は567件となり、過去最高水準となりました。
前年比では53件増加(+10.3%)し、2019年以降、3年連続で500件を超えました。
2021年の休廃業・解散の内訳は、病院が12件、診療所が471件、歯科医院が84件。同年に発生した倒産(法的整理)は、病院が1件、診療所が22件、歯科診療所が10件の合計33件であるため、休廃業・解散がいかに多かったかがわかります。
倒産ではなく休廃業・解散というかたちで事業を終了させるには、原則として借入金や買掛金などの負債が無く、債務免除などが必要ない健全な財務状況であることが前提となります。以前から院長の高齢化を背景にして、後顧の憂いのないように事業を整理して終える医療機関は増加傾向にありました。コロナ禍の感染回避の受診控えや医療従事者の休職増加などによって、その傾向に拍車がかかったことが考えられます。
調査対象医療機関の代表者の年齢をみると、60歳以上の構成比は、病院が82.0%、診療所が82.5%、歯科診療所が58.6%と
なっており、特に病院および診療所の世代交代が進んでいないことがわかります。
ただ病院の場合は医師が最低でも3人は必要なため、後継者候補を内部で見つけることができる可能性はあります。一方で診療所や歯科診療所の場合は、医師が1人のケースが多いために、今後とも代表者の高齢化が更に進み、休廃業・解散件数は増加する可能性が高そうです。
その背景として、昨今、後継者候補である子どもが医師であったとしても、地域の将来性に対する不安(特に地方の場合は顕著)をもっていたり、自分や家族の生活スタイルや教育環境、居住環境を重視したいと考えていたりするなどして、親の医業を承継したがらない傾向があるからです。
日本医師会はコロナ禍以前からこのような状況を憂慮し、地域における「社会的共通資本」としての医療を守るために、譲渡を希望する医師と承継を希望する医師に対する支援、医業承継を行う地域の医師会の支援、日医としての支援体制の充実に取り組み始めていました。
具体的には、郡市区医師会・都道府県医師会に、承継を相談するための専門家(弁護士、税理士)の候補先を示したり、承継を希望する医師の探索等に関して医師会員を約28万人抱えているエムスリー(株)との間で包括連携協定を結んだりしています。
新たに開業を検討している医師の立場からすれば、承継開業にはメリットがあります。
第一に、開業費用が新規開業と比較して少なく済む可能性が高いことです。建築費や医療機器費用などを抑えることで、金銭面でのリスクを下げられます。また前任者の診療実績も考慮されれば、金融機関等からの融資は一から新規で開業する場合よりも受けやすくなります。
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