withコロナ時代、外来患者は戻ってくるのか?
2020.11.20|医療経営
緊急事態宣言が発令された4月以降、患者の受診控えが起こりました。不要不急の受診の減少が続けば医療保険財政はプラスになりますが、医療機関の経営への影響は避けられないでしょう。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、別の疾患で来院する高齢者や小児、更には花粉症、アレルギー、喘息などで受診する患者の受診抑制を招きました。
受診控えによる患者の病状悪化が懸念される一方で、あくまで私のコンサルティング経験からの推察ですが、中にはそもそも頻繁に受診する必要のなかった患者もいたのではないでしょうか。
ある急性期病院が入院医療中心にするために外来患者を積極的に地域の診療所に逆紹介を進めていたのですが、しばらくすると一定割合の患者が病院に戻ってきました。その理由を患者に確認すると、逆紹介された診療所は処方期間を短くし、再診回数が多くなり受診が負担になったためという回答がありました。また急性期病院でも、「処方期間を短くし、再診患者を増やしたほうが良いのではないか」というような議論がありました。このような経験が何度かあったことから、医療機関サイドの要因で外来患者数が過剰になっていた可能性はあるのではないかと想像しています。
かなり以前から医療需要は供給が作り出すといわれており、医療費を抑制するために、入院については医療計画による病床の総量規制や、平均在院日数の短縮が進められました。一方で外来に関しては、病院から診療所への患者のシフト、処方期間の長期化以外に効果的な対応は取られていません。結果的に過去30年間、入院患者数は減少していますが、一般診療所と歯科診療所の外来患者数は増加傾向です。
日本の1人あたり年間外来受診回数(医科)は、国際比較をすると多く、経済協力開発機構( OECD)加盟国の平均が年間6.8回のところ日本は12.8回です。
新型コロナウイルス対策による未曽有の歳出増加や法人税・所得税等の歳入減少によって国家財政は一段と悪化します。医療分野においても改革は避けられないのではないでしょうか。
改革の方向として外来受診に少額の定額負担の導入や、OTC医薬品と同一の有効成分を含む医療用医薬品に対する保険給付の在り方の見直しや薬剤費の一定額までの全額自己負担などが示されています。
またwithコロナ時代が続くことで、国民の受診行動が変化する可能性があります。
日医総研の2017年7月11日付けワーキングペーパー「第 6 回日本の医療に関する意識調査」によれば、「国民は医療を必要以上に利用しているか」という質問に対して、52.5%が「そう思う」と回答しています。この割合は年齢や地域による差は殆どありません。
「国民は医療を必要以上に利用している」と回答した人にのみ「医療を適正に利用するために何が重要か」を複数回答で尋ねたところ、最も多い回答は「自身の健康管理を行う」で70%、続いて「救急車を安易に呼ばない」(59.5%)、「かかりつけ医を持つ」(41.9%)、「同じ病気で医療機関を次々と受診しない(重複受診をしない)」(38.1%)でした。
以上のことから推察すれば、withコロナ時代が続く中、過度の受診抑制はなくなり外来患者数は徐々に増えていきますが、beforeコロナ時代よりも減少する可能性は高いと思います。
地域差はありますが中長期的な人口及び患者の減少に加えて、生活習慣病などの患者の受療率が低下すれば、医療機関はジリ貧状態になってしまいます。早めに対策を立てるために、まずは自院の既存の患者について、薬の処方だけの患者と、診察と検査等が必要な患者を分類し、前者がある程度減少するとした場合に自院の収支をシミュレーションされるのはいかがでしょうか。
将来に亘って地域住民に選ばれ続けるためには、安心して受診できる環境が整備されていることは大前提として、患者として受診することで得られる成果を実感できるような医療機関でなければならないでしょう。
効果を実感できる検査や治療、予後を含めた丁寧な説明、生活指導などができているか、今一度、患者やその家族、調剤薬局やケアマネージャー等々の利用者や地域の関係者の目線で自院のサービスを検証されることをお勧めします。
