「かかりつけ医」機能の強化に向けた新たな制度の施行
2023.11.20|医療政策
かなり以前から健保組合から送付されている通知には、組合員に対して「まずかかりつけ医を受診しましょう」というような呼びかけが記載されていました。日医総研の経年調査によりますと、半数以上の国民が「かかりつけ医を持っている」と答えています。
そのような状況にかかわらず、コロナの発熱外来の受診やワクチン接種をめぐって、多くの患者が医療機関探しのために苦労する状況に陥りました。特に患者自身が特定の医療機関をかかりつけ医と考えていても、医療機関サイドではそのような認識はなく受診をできなかったというようなケースでは、患者側に大きな不満が残ったのではないでしょうか。
そのような背景もあって、2023年5月に成立した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」では、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医」機能を強化するための制度整備が盛り込まれました。
改正法ではかかりつけ医機能を「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と規定し、国民・患者がかかりつけ医を選びやすくするために、以下のような制度整備がなされます。
■ 医療機能情報提供制度の刷新(令和6年4月施行)
現制度では、日常的な医学管理及び重症化予防、地域の医療機関等との連携、在宅医療支援・介護等との連携、適切かつ分かりやすい情報の提供、地域包括診療加算の届出、地域包括診療料の届出、小児かかりつけ診療料の届出、機能強化加算の届出の8項目について、その有無がわかるようになっています。しかし制度の知名度や中身が具体性に乏しい上に、診療報酬制度を知らないと理解できない内容のため、活用はほとんど進んでいません。そのため、例えば医療機関の医師がかかりつけ医機能に関して受講した研修、入退院時の支援など医療機関との連携の具体的内容、休日・夜間の対応を含めた在宅医療や介護との連携の具体的内容など、国民・患者目線で分かりやすいものへの見直しが検討されています。
■ かかりつけ医機能報告の創設(令和7年4月施行)
慢性疾患を有する高齢者その他の慢性疾患の患者、障害者、医療的ケア児など継続的な医学管理が必要な患者を地域で支えるため、かかりつけ医機能(①日常的によくある疾患への幅広い対応、②休日・夜間の対応、③入院先の医療機関との連携、退院時の受入、④在宅医療、⑤介護サービス等との連携)について、各医療機関は都道府県知事に報告を求められるようになります。都道府県知事は、報告をした医療機関がかかりつけ医機能を実際に発揮できる体制になっているのかどうかを確認し、外来医療に関する地域の関係者との協議の場に報告をするとともに、国民に対して公表します。また都道府県知事は、地域にかかりつけ医機能が不足している場合は、医療機関等との協議の場で必要な機能を確保する具体的方策を検討し、協議結果を公表します。
■ 患者に対する説明(令和7年4月施行)
都道府県知事による確認を受けた医療機関は、慢性疾患の高齢者に在宅医療を提供する場合など、外来医療で説明が特に必要で患者が希望する場合に、かかりつけ医機能として提供する医療の内容について、電磁的方法または書面交付により説明するよう努めなければならなくなります。
上記の制度の詳細については、厚生労働省の社会保障審議会・医療部会などにおいて検討されており、施行後のイメージは下図のようになります。
図 かかりつけ医に関する制度整備のイメージ
出典:ニッセイ基礎研究所「かかりつけ医強化に向けた新たな制度は有効に機能するのか」2023年08月28日
国民・患者がかかりつけ医を選ぶ際に、刷新された医療機能情報提供制度やかかりつけ医機能報告制度を活用するようなことは、役所が作成するWebsiteの使い勝手が劇的に変わるとは思えないため、おそらくあまり進まないでしょう。
しかしインターネット上で医療機能情報やかかりつけ医機能情報が検索可能な状態になっていれば、例えばGoogleビジネスプロフィールの検索結果にかかりつけ医選択に必要な情報が付加されたり、マイクロソフトやGoogleの無料の生成AIで質問を入力したりすれば、簡単にかかりつけ医を比較して選択できるようになるのではないでしょうか。
医療機関の立場からすると、日々の診療や経営が忙しい中で報告事項が増加し、非常に煩わしいことだと想像します。ただかかりつけ医として地域住民から選ばれるようにするためには、厚生労働省での検討内容を確認し、いち早く自院のWebsiteにかかりつけ医機能について掲載するなど、より積極的に対応する必要があると思います。