コラム

2026年度診療報酬改定:耳鼻いんこう科経営実務レポート

2026.2.20|医療政策医療経営

 

 

令和8年(2026年)2月13日の中医協答申および関連資料に基づき、耳鼻いんこう科診療所経営者に特化した実務レポートを作成しました。

令和8年度診療報酬改定 実務レポート【耳鼻いんこう科編】

本レポートは、2026年2月13日の中医協答申資料に基づき、耳鼻いんこう科診療所の経営に直結する重要変更点を解説します。

今回の改定は、**「物価高・賃上げへの緊急対応」と「医療DX・サイバーセキュリティの必須化」**が二大テーマです。
特に、季節変動があり来院患者数が多い耳鼻いんこう科においては、初・再診時の「基本料上乗せ」項目が収益を大きく左右します。

 

① 耳鼻いんこう科の診療所に関係する主な変更点

今回の改定では、ネブライザーや処置等の個別点数の変更以上に、すべての患者に関わる「基本診療料」の構造改革が経営にインパクトを与えます。

 

1.基本診療料の引き上げと「物価対応料」の新設

    • 初診料・再診料の引き上げ: 昨今のコスト増を反映し、基本点数そのものが引き上げられます。
    • 「物価対応料」の新設: 物価高騰への対応として、外来において「物価対応料」が新設されます。初診時・再診時に毎回算定可能です。
    • 影響: 花粉症シーズンなどで患者数が多い耳鼻科にとって、患者1人あたりの単価底上げ効果が大きくなります。

2.医療DXとサイバーセキュリティの評価厳格化

    • 「電子的診療情報連携体制整備加算」の新設: 従来の医療DX関連加算が再編され、初診・再診時に算定可能な「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されます。
    • 重要要件: 算定要件として**「サイバー攻撃対策」**が含まれており、診療所であっても厚労省ガイドラインに準拠したセキュリティ体制(バックアップ、UTM導入等)が必須となります。

3.耳鼻いんこう科領域の検査・処置・手術の見直し

    • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)関連検査の適正化: 「D237 終夜睡眠ポリグラフィー」について評価が見直されています。
      安全精度管理下で行う場合(4,760点)や、その他の場合(3,570点)など区分が整理されました。
    • 手術点数の引き上げ: 以下の手術等の評価(点数)が引き上げ・見直し対象となっています。
      K318 鼓膜形成手術
      K333 鼻骨骨折整復固定術
      K389 喉頭・声帯ポリープ切除術(直達喉頭鏡又はファイバースコープによるもの)

4.賃上げ支援の拡充

    • ベースアップ評価料の拡充: 看護師、事務職員、言語聴覚士等の賃上げを行う医療機関に対し、「ベースアップ評価料」の評価が見直され、継続的な賃上げ実施機関を優遇する内容となっています。

② 変更が耳鼻いんこう科診療所の経営に及ぼす影響

今回の改定は、DX対応とセキュリティ投資を行える診療所には「増収」の機会となる一方、対応が遅れた診療所は機会損失が拡大する構造です。

 

1.収益構造への影響:患者数比例のメリット

    • 増収要因: 耳鼻いんこう科は1日の来院患者数が比較的多い診療科です。
      そのため、初・再診ごとに算定できる「物価対応料」や「電子的診療情報連携体制整備加算」の積み上げ効果が、他科よりも経営に大きく寄与します。
    • 外来単価の上昇: 基本料アップにより、処置・検査が少ない軽症患者(投薬のみの花粉症患者など)であっても、最低限の単価が底上げされます。

2.算定できる診療所とできない診療所の格差

    • セキュリティの壁: 新設の「電子的診療情報連携体制整備加算」は、サイバーセキュリティ対策が要件です。
      これを満たさない(古いレセコンやセキュリティソフト未導入の)診療所は、再診ごとの加算を取りこぼすことになり、近隣の対応済みクリニックと収益力で明確な差がつきます。

3.コスト構造の変化とSAS診療のリスク

    • システム投資: サイバー対策は、もはや「コスト」ではなく「診療報酬を得るための設備投資」となります。
    • SAS検査の収益: 終夜睡眠ポリグラフィーの点数要件が変更されたため、提携する検査会社や実施体制によっては、算定点数が変動(減収)する可能性があります。

③ 取るべき対策

耳鼻いんこう科診療所経営者が実行すべきアクションを優先順位順に提示します。

 

【優先度:高】すぐに確認・着手すべき項目(1〜2ヶ月以内)

    • サイバーセキュリティ対策の現状診断:
      新設の「電子的診療情報連携体制整備加算」を確実に取り込むため、自院のシステムが厚労省のガイドライン(医療情報システムの安全管理に関するガイドライン)に適合しているか、ベンダーに至急確認してください。UTM(統合脅威管理)の導入が必要かどうかが焦点です。
    • 賃上げ計画の策定:
      4月からの賃上げに向け、ベースアップ評価料の算定届出の準備を行ってください。スタッフ確保競争が激しい中、この加算を原資とした待遇改善は必須です。

【優先度:中】半年以内に整備すべき体制

    • レセコン改修スケジュールの確保:
      「物価対応料」等の新設項目に対応するため、システム改修が必要です。
      改定時期はベンダーが混み合うため、早めの予約が必要です。
    • SAS検査体制の再確認:
      D237終夜睡眠ポリグラフィーの新しい算定要件(安全精度管理など)を確認し、自院の検査運用がどの点数区分に該当するか、検査委託会社と確認・調整してください。

【優先度:低】中長期で取り組むべき戦略

    • 日帰り手術の検討(実施施設のみ):
      鼓膜形成やポリープ切除などの点数が引き上げられたため、日帰り手術を実施している場合は、集患や枠の拡大を検討し、収益性の向上を図ってください。

 

まとめ

令和8年改定は、「患者数が多い耳鼻いんこう科」にとって、物価対応料やDX連携加算による増収効果を享受しやすい内容です。

しかし、その恩恵を受けるための必須条件が**「サイバーセキュリティ対策」**です。
システム投資を惜しまず、これら新設項目を確実に算定することが、今後の経営安定の絶対条件となります。

 

 

【本レポートの活用にあたって】
本資料は、2026年2月13日付の中医協答申資料をソースとして 、最新の生成AI技術を用いて当会が独自に分析・編纂したものです 。
速報性を重視しているため、実際の運用や解釈が今後の官報告示等で異なる場合があります 。
投資や雇用などの重要な経営意思決定に際しては、本レポートの示唆を一つの指針としつつ、医業経営の各専門家(コンサルタント、税理士、労務士、弁護士等)による最終的な確認と指導を受けるようにしてください。

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