2026年度診療報酬改定:歯科経営実務指針
2026.2.20|医療政策歯科経営
令和8年(2026年)2月13日の中医協答申および関連資料に基づき、歯科診療所経営者に特化した実務レポートを作成しました。
令和8年度診療報酬改定 実務レポート【歯科診療所編】
本レポートは、2026年2月13日の中医協答申資料に基づき、歯科診療所の経営に直結する重要変更点を解説します。
今回の改定は、**「物価高騰・賃上げへの緊急対応」と「歯科DX・デジタル化の本格推進」**が二大テーマです。
基本診療料の底上げに加え、デジタル技術活用や歯科技工士との連携に対する評価が新設されており、積極的な設備投資と体制整備が収益を左右する内容となっています。
① 歯科診療所に関係する主な変更点
今回の改定では、初・再診料の引き上げに加え、物価高騰に対応する新加算や、デジタルデンティストリーに関連する技術料が新設・拡充されました。
1.基本診療料の引き上げと「物価対応料」の新設
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- 初診料・再診料の引き上げ:
歯科初診料:267点 → 272点(+5点)
歯科再診料:58点 → 59点(+1点) - 「歯科外来物価対応料」の新設: 物価高騰への対応として、外来診療において以下の点数が加算されます(令和9年6月以降は点数変更あり)。
初診時:3点
再診時:1点
- 初診料・再診料の引き上げ:
2.賃上げ支援の拡充(スタッフ&歯科技工所)
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- ベースアップ評価料の拡充: 歯科衛生士、歯科技工士、事務職員等の賃上げを行う医療機関に対し、「歯科外来・在宅ベースアップ評価料(I)」の評価が見直されました。継続的に賃上げを行う医療機関はより高い点数が設定されています(初診時21点、再診時4点など)。
- 「歯科技工所ベースアップ支援料」の新設: 歯科技工士の賃上げを支援するため、歯科技工所へ補綴物製作を委託する場合、1装置につき15点を算定できる加算が新設されました。
3.歯科DXとデジタル化の推進
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- 「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」の新設: 従来の医療DX推進体制整備加算等が再編され、初診時に9点(体制1)または4点(体制2)、再診時に2点(月1回)が算定可能になります。算定にはマイナ保険証利用体制やサイバーセキュリティ対策が必須要件となります。
- デジタル技術の評価:
- 3次元プリント有床義歯: 新たな製作法として1顎につき4,000点が新設されました。
- 光学印象: CAD/CAM冠等の製作時にデジタル印象採得装置(IOS)を用いた場合、1歯につき100点が算定可能になりました。
4.歯周病管理・連携の見直し
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- 「歯周病継続支援治療」の新設: 歯周病安定期治療(SPT)等の体系が見直され、新たに「歯周病継続支援治療」として整理されました(1〜9歯:170点、10〜19歯:200点、20歯以上:350点)。
- 医科歯科連携の強化: 糖尿病患者に対して内科から紹介を受けた場合の「歯科医療機関連携強化加算」(60点)や、病院からの依頼で入院患者に訪問診療を行う「医科連携訪問加算」(500点)が新設されました。
② 変更が歯科診療所の経営に及ぼす影響
今回の改定は、DX対応やデジタル機器導入を進める診療所には「増収」の機会となる一方、従来型の手法にとどまる診療所との収益格差が広がる可能性があります。
1.収益構造への影響:ベースアップとデジタル加算
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- 増収要因: 初・再診料の引き上げ、物価対応料、電子的連携加算の合計により、患者1人あたりの単価(特に再診時)が確実に上昇します。
来院頻度が高い歯科において、再診ごとの1〜3点の積み上げは年間収益に大きく寄与します。 - デジタル投資の回収: 光学印象(100点)や3次元プリント義歯(4,000点)など、高点数のデジタル項目が新設されたことで、IOSや3Dプリンターへの設備投資回収が計算しやすくなります。
- 増収要因: 初・再診料の引き上げ、物価対応料、電子的連携加算の合計により、患者1人あたりの単価(特に再診時)が確実に上昇します。
2.算定できる診療所とできない診療所の差
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- セキュリティと賃上げの壁: 「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」や「ベースアップ評価料」は、サイバー対策や賃上げ計画の届出が要件です。
これに対応できない診療所は、これら加算(初診時で数十点差)を取りこぼすことになり、経営体力に差がつきます。
- セキュリティと賃上げの壁: 「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」や「ベースアップ評価料」は、サイバー対策や賃上げ計画の届出が要件です。
3.コスト構造の変化
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- 委託技工料の上昇: 「歯科技工所ベースアップ支援料」は診療所が算定するものですが、趣旨は技工所の賃上げ原資です。
これに伴い、技工所からの委託料金値上げ要請が予想されますが、点数で補填される仕組みです。
- 委託技工料の上昇: 「歯科技工所ベースアップ支援料」は診療所が算定するものですが、趣旨は技工所の賃上げ原資です。
③ 取るべき対策
歯科診療所経営者が実行すべきアクションを優先順位順に提示します。
【優先度:高】すぐに確認・着手すべき項目(1〜2ヶ月以内)
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- 賃上げ計画の策定と届出:
スタッフの確保と定着のため、「歯科外来・在宅ベースアップ評価料」の算定は必須です。
4月からの賃上げに向け、計画書を作成し厚生局へ届け出てください。 - サイバーセキュリティ対策の点検:
新設の「電子的歯科診療情報連携体制整備加算」算定のため、レセコンやネットワークのセキュリティ対策(UTM導入等)がガイドラインに適合しているか、ベンダーに至急確認してください。 - 歯科技工所との連携確認:
「歯科技工所ベースアップ支援料」の算定には、委託先技工所との連携(賃上げ支援の確認)が必要です。
委託先と対応について協議してください。
- 賃上げ計画の策定と届出:
【優先度:中】半年以内に整備すべき体制
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- デジタル機器の活用検討:
光学印象(IOS)の保険適用範囲が拡大しました。自院の補綴物製作フローにおける採算性をシミュレーションし、導入や稼働率向上を検討してください。 - 医科歯科連携ルートの開拓:
近隣の内科クリニックに対し、糖尿病患者の紹介受け入れ体制(新設の連携加算対象)があることを周知し、集患ルートを強化してください。
- デジタル機器の活用検討:
【優先度:低】中長期で取り組むべき戦略
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- 3Dプリント義歯等の新技術導入:
3次元プリント有床義歯の施設基準(機器保有または連携)を確認し、将来的な導入を検討してください。技工時間の短縮や効率化につながる可能性があります。
- 3Dプリント義歯等の新技術導入:
まとめ
令和8年改定は、**「物価対応」と「デジタル化」がキーワードです。
基本料アップの恩恵を受けつつ、「サイバー対策」「賃上げ」「デジタル機器活用」**の3点に対応できるかが、今後の歯科経営の安定性を決定づけます。
特にIOSなどのデジタル技術は、単なる自費診療用ツールから、保険診療の収益源へと位置づけが変わった点に注目してください。
【本レポートの活用にあたって】
本資料は、2026年2月13日付の中医協答申資料をソースとして 、最新の生成AI技術を用いて当会が独自に分析・編纂したものです 。
速報性を重視しているため、実際の運用や解釈が今後の官報告示等で異なる場合があります 。
投資や雇用などの重要な経営意思決定に際しては、本レポートの示唆を一つの指針としつつ、医業経営の各専門家(コンサルタント、税理士、労務士、弁護士等)による最終的な確認と指導を受けるようにしてください。