既に起こった未来 2040年問題を考える その3
2020.9.20|医療政策医療経営
“バックキャスティング”という言葉を耳にされたことはありますか。「未来」を起点とし、逆算して「現在」を考えることです。
現在の延長線で未来に向けて進んでいても、2040年問題への適応は難しいのではないでしょうか。
車を運転していると視線上にあるものは目に入れますが、まったく違う方向にあるものに気づくことはありません。経営や個人のキャリアも同様です。日々の忙しさに追われていると、現在の延長線上から外れないように走ることで精一杯になってしまいます。
2040年の医療機関を取り巻く環境は大きく変化します。その未来に否が応でも対応しなければなりません。その方法を二つ挙げます。一つ目は、現在を起点にして将来を予測する方法、フォーキャスティングです。二つ目は、将来を起点にしていま何をすべきか考える方法、バックキャスティングです。

まず「現在の延長線上に想定される未来」については、5月号で整理しました。

次に「望ましい未来の姿」ですが、個人の価値観の違いがあり一つに決めることは難しいでしょう。ただ総論賛成になり得る考え方として、診療報酬改定時に示される基本的視点が参考になります。この視点は1番目を除いて過去から踏襲されており、2040年に向けても変わらないでしょう。令和2年度診療報酬改定の基本的視点は、以下の4点です。

「現在の延長線上に想定される未来」と「望ましい未来の姿」から、取り組むべきことが自然と見えてきます。
第一に、医療従事者にとって働きやすい環境づくりです。常勤職員からはもちろんのこと、非常勤職員からも選ばれる医療機関になるために、他業種との人材獲得競争に備えてこれまでの医療機関仕様ではなく、ゼロベースでの人事の仕組みの構築が必要でしょう。
第二に、質の高い医療サービスの提供です。そのためにはアウトカムの評価の導入や、サービスの質に関して患者や住民に理解してもらうために外部の意見を積極的に取り入れる仕組みづくりなどが考えられます。
第三に、顧客ニーズに基づく公的保険外のサービス分野に事業範囲を拡げる、もしくは他市場への進出です。日本の社会保障財源の先細りは明白です。事業成長がなければ職員の給与水準を他産業並みに維持するのは困難になる可能性があるため、事業領域もしくは市場を拡げる必要があります。事業領域については、公的保険の領域では在宅医療や介護の分野、公的保険外では厚生労働省等が発行している保険外サービス活用ガイドブック等が参考になります。市場については、日本医師会の地域医療情報システムが参考になります。また国際展開も考えられます。
第四に、効率化のためのスケールメリットの追求です。将来に向けて設備投資や人材教育などを実施するにあたり、一医療機関では医療法人グループなどに劣後してしまうでしょう。地域医療連携推進法人も少しずつですが増えてきています。他の医療機関や事業者との連携以上の関係構築が必要になってくるのではないでしょうか。
第五に、ICTやAI、ロボットなどの積極的な活用です。働きやすい環境、質の高い医療の提供、業務効率化、他医療機関等との関係構築のためにも必要不可欠です。
最後に、人生100年時代を迎える中、医療・介護需要の変化や医療技術の深化等に適応するために、今後の自らのキャリアについて一度立ち止まって考えてみるのも良いのではないでしょうか。