災害対策に求められる 上手に医療にかかるための “かかりつけ医”の役割
2021.9.20|医療経営
6月23日の日本経済新聞に「土砂崩れ市街地に危険。住宅92万戸警戒区域と重なる」という見出しの記事が大きく出ていましたが、7月3日に熱海市で土石流が発生し、130棟あまりの家屋を呑み込み20名以上の死者を出しました。
国土交通省はコンパクトシティ整備のための立地適正化計画を公表している275都市について、居住誘導区域と危険地域の重なり度合いを2019年12月時点で調査しました。河川が氾濫した場合に浸水する恐れがある「浸水想定区域」と居住誘導区域が重なる場所がある都市は242と、全体の88%を占めています。誰もが自然災害のリスクと隣り合わせになっている可能性が高いことを認識しておいたほうが良さそうです。
医療機関として実施すべきことは、まず自院や自宅の被災するリスクを把握しておくことです。医療機関は一般的に診療圏人口の多い地域を選んで開業するでしょうから、結果的に医療機関自体が災害リスクの高い地域に立地してしまっているようなケースもあるかもしれません。地元自治体が公表しているハザードマップで、自院はもちろんのこと、自院の診療圏の被災の可能性、例えば災害拠点病院や関係の深い介護施設の立地状況なども含めて調べられることをお勧めします。
災害はいつ発生するか予想できませんので、日頃からの備えが重要です。例えば東京都では首都直下地震などの大規模地震災害が発生した際に、医療機関が医療提供機能を維持できるように、大規模地震災害発生時における医療機関の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン※を作成しています。
BCPは新型コロナウイルス感染症でもその必要性が再認識されましたが、BCPを策定されていない医療機関は多いと思いますので、まずはこのガイドラインを一度ご覧になられることをお勧めします。
※事業継続計画(Business Continuity Plan):大災害や事故などの被害を受けても重要業務が中断しないこと、もしくは中断したとしても可能な限り短い期間で再開することができるように、事業の継続に主眼をおいた計画
災害が発生した際にかかりつけ医として果たすべき対応や事前の備えについては、日本医師会の救急災害医療対策委員会が2018年2月にまとめた報告書「地域の救急災害医療におけるかかりつけ医の役割―地域包括ケアシステムにおける災害医療を中心に」が非常に参考になります。
まずかかりつけ医は、大規模災害の際に自地域の住民・患者に対する診療や健康管理とともに、地域包括ケアシステムの中心的な存在として、“各地域での医療の統括を担う自覚”が必要とされます。そのためには、平素からかかりつけ医として地域の様々な実情を理解するとともに、住民・患者や地域の医療・介護事業者から信頼を得ておく必要があります。
図表のようにかかりつけ医は、災害当初においては救護所や自院・近隣医療機関で、慢性期では避難所等で介護関係者を含む多職種連携を統括していくことが期待されています。
また大規模災害の場合は、被災地外からの日本医師会災害医療チーム等と情報共有して連携し、効率的な災害時の医療の提供と地域医療の早期の機能回復を目指すことが求められています。
住民・患者や地域の医療・介護事業者から信頼を得るためには、平時のうちから災害発生時の医療面での対処方法を伝えておくことが望ましいでしょう。例えば災害発生時の対処方法について汎用的な資料を作成し配布したり、勉強会を開いたりすることなどが考えられます。
災害への備えをテーマにして積極的に住民・患者や地域の医療・介護事業者とコミュニケーションをはかり連携関係を構築しておくことは、災害発生時の対応の速度や質を確実に高めることができるでしょう。併せて、自院の特徴や院長の性格・考え方などを含めて関係者に伝えることのできる格好の機会にもなりますし、かかりつけ患者の新たな獲得にもつながるのではないでしょうか。
