コラム

後世への負担を更に膨らませたオリンピック・パラリンピック

2021.11.20|その他

9月5日に閉幕したオリ・パラ。日本選手の活躍もありましたが、コロナ禍、無観客など後世の記憶に残る五輪になりました。ただ記憶とともに、過去からの膨大な国の借金が更に膨らみ、後世に負担を残すことになりました。

復興五輪の名目で誘致に成功しましたが、復興特別所得税は2037年まで課税されます。現地の復興も完全ではない上に、財政面での借金は残しており、今の小中学生も働き始めれ9月5日に閉幕したオリ・パラ。日本選手の活躍もありましたが、コロナ禍、無観客など後世の記憶に残る五輪になりました。ただ記憶とともに、過去からの膨大な国の借金が更に膨らみ、後世に負担を残すことになりました。

そもそも日本の財政は、下図のように歳出が税収を上回る状況が続き、その差は借金(建設公債・特例公債)によって賄われています。それに加え、五輪招致活動を始めた当初の予想額のほぼ3倍まで膨らみ(出典:WSJ日本版)、費用は約2.4兆円。更にコロナ対策名目の野放図な財政支出によって、国債の残高は累増の一途をたどり、2021年度末には990兆円に上ると見込まれています。更に更に五輪のために建設した施設の毎年の運営費用の赤字補てん額も、来年度以降に明らかになるでしょう。

1975年以降、国債を発行することで税収よりも多くの歳出を行ってきたツケがどんどん貯まり、2020年には55.1兆円しか税収がないにもかかわらず175.7兆円もの歳出をしました。日本の債務残高の対GDP比は約240%弱で、次に高いイタリアでも134%、アメリカ108%と比べると格段に悪い状況であることがわかります。ちなみに財政規律がしっかりしているドイツは57%です。

一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移
出典:財務省Website

2012年の山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板が約130メートル の区間にわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて9名が死亡した事故を覚えていますか?

不謹慎かもしれませんが、死者9名で済んだのは奇跡だったのかもしれません。

その原因究明及び対策のために2013年に「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について答申 本格的なメンテナンス時代に向けたインフラ政策の総合的な充実 ~キックオフ「メンテナンス政策元年」」がまとめられました。国土交通省の試算によると、道路(トンネル、橋梁等)、治水(河川・砂防・ダム)、下水道、港湾、公営住宅、公園、海岸、空港、航路標識、官庁施設の維持管理・更新費は2013 年度に約 3.6 兆円、10 年後は約 4.3~5.1 兆円、20 年後は約 4.6~5.5 兆円程度になるものと推定されていました。答申によれば問題は、予算の不足に加えて土木技術のわかる職員の不足、自治体の危機感の不足とのことでした。

1964年の東京五輪の頃、高度経済成長期に集中的に整備された社会インフラの維持管理・更新を、優先順位をつけて確実に実行し続けなければ、いずれ第二の笹子トンネル事故が発生する可能性が間違いなくあるように思います。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で、答申が棚ざらしになっている可能性があるからです。

前回の五輪の時代は生産年齢人口が増加し、税収が増加する時代でした。1990年代以降の税収は、図のように減少傾向です。限られた税収を使うことを考えれば、1,600億円もかけて新しい国立競技場などを造るよりも、人命を奪う危険性の残る社会インフラの修繕に回すほうが良かったのではないでしょうか。

また未来に目を向ければ、日本は災害大国であるため高い確率で大地震が発生することが予測されています。令和2年版国土交通白書によれば、首都直下地震で想定されるマグニチュード7程度の地震の30年以内の発生確率は70%程度。地震の被害としては、最大で死者が約32.3万人、建物の全壊及び焼失棟数が約238.6万棟。被災地の経済被害は最大で約169.5兆円と試算されており、東日本大震災(16.9兆円)をはるかに超えるものと想定されています。

南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率は70~80%。最大で死者が約2.3万人、建物の全壊及び焼失棟数が約61万棟、経済被害は建物等の直接被害だけで約47兆円と試算されています。

今般のような感染症の拡大を含め、経済危機、大規模な自然災害などの事態はいつ起こっても不思議ではありません。平時に財政健全化を進めておくことが重要なのですが、過去の膨大な借金に加えて、無駄遣いの多い経済対策名目の財政出動、リニア新幹線の新設や新幹線網の拡充、大阪万博、2030年の札幌オリンピック招致など、政治家は現役世代、将来世代に借金を付け回すようなことばかり優先しているように見えます。

将来の日本はどうなるのか。自分でできることは? 少なくとも経済面で国に頼り過ぎない生き方、自助による備えについて真剣に考える必要があるのではないかと思っています。

 

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